第18話:王太子第三騎士団設立
「私が騎士隊長格なのですか?!」
リカルド王太子の言葉に、元フィエン公爵家騎士団長のアイルは思わず驚愕の言葉を口にしていた。
それもそうだろう、裏切者と王国中から非難を浴びているフィエン公爵で騎士団長を務めていた自分が、王太子第三騎士団の騎士隊長格だと言われたのだから。
「正式な騎士隊長ではなく、合同で戦うために必要な格の認定だから、そんなに驚くことも気にする事もないさ。
なんと言っても第三騎士団の半数は、アイル配下の傭兵団員なのだからね」
リカルド王太子はそういうが、普通では絶対にありえない事だった。
そしてとてもありがたい事でもあった。
王太子騎士団の騎士隊長格をもらえれば、どれほど忌み嫌っていようとも、貴族であろうと表立った差別も敵視もできなくなる。
輝かしい実績と名声を得たリカルド王太子が、魔王軍と戦うのに必要と判断した戦力を、貴族や重臣が排除する事などできない状況だったからだ。
そもそも元フィエン公爵家将兵が国内に残れた理由、それはリカルド王太子が魔王軍第三波が来る事を確信していたからだ。
リカルド王太子が、魔王軍について書かれている過去の文献を文官に調べさせた結果、魔王軍の主力と言える魔族とはまだ一度も戦っていないのだ。
第一波第二波で戦ったのは、過去の魔王軍では雑兵扱いのオークやゴブリン、腕力はあるが頭の悪いオーガばかりだった。
第二波を撃退してひと息ついている今のうちに、戦力の再編と増強を図っていた。
それが王太子第三騎士団と王国第五騎士団の新設だった。
大陸各国から輸入した雑穀を蒸留酒にして、元の十数倍の価値にして輸出する事で、大きな利益を生むことができるようになった。
その利益で新たに二個騎士団の新設と傭兵団の増員が可能となっていた。
王太子第三騎士団は、リカルド王太子が団長を務めて直卒するも、常時王太子に近侍するのは、元王太子第一騎士団にいた者達だ。
残りの半数であるアイル傭兵団は、アクス城伯クバント卿が団長を務め北の魔境を抑える第二騎士団に協力することになっていた。
アクス城と協力できる位置に城塞を築き、そこに傭兵団員と家族が常駐して魔族の来襲に備えるのだ。
アイル傭兵団が築いた城塞内には、フィエン一族の墓が作られ弔われている。
そしてそれは、遠回しにアイルを将来城伯にするという意味でもあった。
「王太子騎士団」
第一騎士団:ベッカー宮中伯バーツ卿
フィエン城・騎士団と元傭兵が半々
第二騎士団:アクス城伯クバント卿
アクス城・元傭兵が主力
第三騎士団:フェルデ騎士隊長
:ラウンデル騎士隊長
アイル城 :アイル:元フィエン公爵家騎士団長
:騎士団と元フィエン公爵家将兵半々
「王国騎士団」
第一騎士団:国内東
第二騎士団:国内北
第三騎士団:国内南
第四騎士団:国内西
第五騎士団:王都
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