~それぞれの夏休み 2~

 夏休みを満喫している人は沢山いるだろう。僕ももちろんその内の1人。だがその過ごし方は世間が想像するものと違うかもしれない。海に行ったり、山に行ったり、祭りに行ったり、夏といえばこのようなイメージだが、そんな華々しい生活とは無縁の僕はひたすら家に引きこもってゲームをしていた。夏の海や祭りに憧れる気持ちは少しあるのだけど、僕は僕で楽しんでいるので問題ない。そう思っていたのだが、最近マンネリを感じるようになってきた。ゲームに飽きたというよりは楽しくなくなってきたのだ。


「また負けた…」


 画面が映しているのは自分が操作していたキャラが敵に撃たれて倒れるところ。楽しくないというのはこのように最近負けが続いているからだ。


 僕がいつもやっているゲームは2人一組でチームを組み、計50組で争うバトロワ系のFPSゲームだ。ゲーム内にはランクという階級のようなものがあり、いい順位をとるとランクは上がっていく。

 そこそこやり込んだおかげで僕も少しずつランクを上げることができ、今では高ランクでプレイしている。高ランク帯になると、上手いプレイヤーが多く、その分いい順位を獲るのも難しい。徐々に勝てなくなって、モチベーションも低くなっていった。

 そんな時に二宮君と出会った。席が近いことがきっかけとなって話すようになり、話していくうちに二宮君も同じゲームをやっていることを知った。それを機に一緒にプレイするようになり、より仲良くもなれた。二宮君は僕ほどはやり込んでいなかったけど、僕に合わせてやってくれるようになり、めきめきと上達していった。意思疎通ができる人とプレイすることで勝てるようにもなり、モチベーションが再び高くなる。なにより、友達と一緒に遊ぶのが楽しかった。


「1人でやってもつまんないなー…」


 夏休みも一緒にプレイしようと言っていたのだが、最近は中々できていない。約束をしているわけではなく、お互い暇な時に連絡して時間が合えばやるという感じなので不満はないけれど、少し寂しい。

 二宮君は僕と違って忙しいから仕方がないことだ。知り合って最初の内は僕と似たような雰囲気だったこともあり、すぐに仲良くなれそうだと思った。実際に二宮君は優しくて、すぐに仲良くなれた。

 でも僕と似ているというのは間違いだった。決して騒がしいわけでも自分から目立とうとしているわけでもないのに、二宮君の周りには自然と人が集まっていく。あの白石さんや真弓さんと仲が良いのは驚いた。有薗君も仲良いみたいだし、松方君とも仲が良いらしい。いつの間にか林君とも仲良くなってるし、完全に僕とは違う人だった。

 それを知った時、本当は僕と関わるのが煩わしいと思ってないかなと不安になった。不安を抱えながら考えて考えて出した僕の答えは『二宮君がそんなことを思うわけない』だった。

 多分、彼と仲が良い人は同じ答えにたどり着く。だから自然と人が集まってくるのだろう。


「ちょっと休もうかな」


 今日も声をかけてみたが〈出掛ける〉と言っていた。当然のように僕のことも誘ってくれたのだが、他の人がいるので申し訳ないのだが断った。人見知りの僕は知らない人と上手く話せず、空気を壊してしまうかもしれないから。


「夜も一人か…」


 寝転びながらスマホをいじっているとピロンっとメッセージが届く。


二宮君〈夜暇なら一緒にやらない?〉


 ものの5分もしない内に寝かした体をすぐに起こして再び画面の前に座った。手にはコントローラーを持ち、ゲームを起動させる。


 こんな夏休みの過ごし方を聞いたら「もったいない」とか「もっと外に出て遊べよ」とか言う人もいるだろう。でも関係ない。僕が楽しいければそれでいいし、今の時代どこでだって友達と遊べるのだから。


内山フミヤ〈やる!〉

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