第7話
学園祭の演劇は、散々な出来に終わった。観客に別の意味で笑いを与えてしまったことに、僕は大いに反省している。
当然、最優秀文化部賞は、漫画研究会にさらわれてしまった。
学園祭の後片付けが終わり、昼になると皆は帰宅していく。僕と飯野さんは、裏庭のベンチでゆったりしていた。
「来年は、も、もっといいものにしていきたいね」
「うん。そうするために、部員をたくさん増やそうね、部長」
「ぶ、ぶ、部長?」
寝耳に水の一言で、僕の心臓はドラムを叩く。
「だって、一番最初にいた人が部長になるよね」
「そっ、そんな決まり、ないって」
「うそぉ? 私、部長だけは絶対に嫌だから」
「ぼ、僕だって、い、嫌だよ」
話しが並行線になると感じた彼女は、ベンチをすっくと立ち上がってこう言う。
「分かった。なら、新しい子を入れて、強引に部長にしよう」
「だけど、それって、勧誘。したことないから、ちょ、ちょっと」
「1人じゃ無理でも、二人ならやれるよねっ」
彼女の猛プッシュにやられて、僕も渋々立ち上がる。1人が好きだったのに、いつの間にか2人きりでいる時間が長くなっている。
でも、2人きりも悪くないかもしれない。
(終わり)
1人と1人が混じりあう時 鷹角彰来(たかずみ・しょうき) @shtakasugi
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