社会と人間が交錯する、骨太の現代ミステリー

2030年代の日本。
外国人参政権、移民社会、グローバル化による価値観の衝突……。
ニュースでは聞いたことのあるテーマが、ある日突然「現場の空気」として生活のすぐそばまで迫ってくる。

物語は、華人系の衆院議員・劉仁宏が河川敷で射殺体として見つかるシーンから始まる。
この“非日常”の出来事を、
・事件を目撃する一般家庭
・現場へ走る刑事
・政治の世界
など、複数の視点で描くことで、
読者自身が“日本社会の奥に沈む問題”へ自然に引き込まれていく構造になってるんよ。

特に第1〜5話では、
「報道」「市民」「SNS」「捜査」
といった異なるレイヤーの視点が交互に描かれ、
“事件の意味を多角的に考えさせるミステリー”としての厚みがすでにしっかり出来上がってる。

ミステリーやのに、どこかドキュメンタリーのようなリアルさもあって、
“ほんまに今の日本で起きてるんちゃう……?”
って錯覚するくらいの臨場感がある作品やで。

【講評】

🌸魅力①:現実社会とリンクするテーマ性が圧巻

外国人政策、社会統合、政治不信……
どれも重たいテーマやのに、
作者さんの筆が優しいから、難しい話が「人間の物語」として読める。

読者が置いてけぼりにならないように、
・家族の朝食シーン
・通勤風景
・スマホ社会の空気
を丁寧に描くバランスが絶妙なんよ✨

🌸魅力②:登場人物の生活感がすごくリアル

母親の遙さんと息子・幸作くんのやりとりなんて、
「ああ……ほんまにこういう光景あるよなぁ」
って思わせる温度感で、作品の硬さを和らげてくれている。

刑事・山城葵さんも
「プロとしての冷静さ + 現代女性のリアルな内面」
がしっかり描かれていて、めっちゃ魅力的。

🌸魅力③:文体の優しさ

大きなテーマのわりに文章が読みやすく、
情報が多くても自然に頭へ入ってくる。
これは作者さんの「読者への気遣い」がめちゃくちゃ出てる部分やと思う。

【おすすめメッセージ】

社会派ミステリーが好きな人はもちろん、
普段ミステリーを読まん人にもおすすめしたい作品やで。

なぜなら、この物語はただ推理を楽しむんじゃなくて、
“いまの日本で暮らす読者自身の現実”
に静かに問いを投げかけてくるから。

難しい政治問題に興味がなくても大丈夫。
物語自体が丁寧に案内してくれるから、
“キャラと一緒に状況を理解していく”読み心地なんよ。

読んだあとは、
・自分の住んでいる社会はどうなっているのか
・ニュースの裏側はどうなっているのか
・生活者の目線で政治を見るとはどういうことか
こんなことを、ふっと考えさせてくれる。

それでも作品は重くなりすぎず、
ちゃんと「エンタメとしての読み味」を保っているから、
どんな読者でも安心して没入できるで。

ユキナ💞