秋月
浮かれがちな夏が終わって、秋がやって来る。
俺は人生初の彼女ができたにもかかわらず、なぜだかモヤモヤしたものを抱えていた。
今年に入ってから好きな人ができた。
春宮さんという人だ。
ふんわりとしたボブが可愛い女の子。
好きになってからすぐに、月野に相談した。
こういうのは女子の方が詳しいと思ったから。
月野は全力で俺を応援してくれた。
月野のおかげで春宮さんと付き合うことができたといっても過言ではない。
俺と春宮さんが付き合いだしたことはあっという間に広まり、月野とは話しにくくなった。
秋と春がお似合いだとかなんとか言われたけど、名字でいるなら秋月と月野の方が似合ってるよなあって、考えていたことをそのまま春宮さんの前で話してしまった。
しまった、と思った時には時すでに遅し。
春宮さんは困ったように笑ってから言ったのだ。
「秋月君って、たぶん月野さんのことがすきよね」
あの時の俺の目は、これでもかというくらい泳いでいたと思う。
「分かるもの。仲良かったみたいだし。それに秋月君の視線の先にはいつも月野さんがいるのよね。私に抱いていた気持ちって、恋っていうより憧れに近いものなんじゃないかしら?」
俺がなにも返せないでいると、春宮さんは静かにほほ笑んだ。
「だからね、よく考えて。それで本当に私が好きだって思ったら、もう一回告白してほしいな」
それから一週間がたったある日、おれは月野に呼び出された。
場所は二人でよく歩いた橋の上。
遠目に月野の姿が見える。
俺は覚悟を決めて、しかしそれを悟られないように、ゆっくりと歩き出した。
「月野!」
秋の風が、俺たちの間を通り過ぎていった。
秋の風に吹かれて 月環 時雨 @icemattya
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます