第3話
ㅤあれから何時間経ったのだろうか。俺は重い体を起こして、大きな欠伸をしながらぐっと背伸びをした。
「ここは・・・・・・、俺の家か」
ㅤ辺りを見回すと、見慣れた部屋に立っていることに気付いた。
「あ、起きました?」
「えっと・・・・・・、ああ、レリーか」
ㅤ台所からレリーがひょこっと顔を出してきた。
「昨日は申し訳ございません。神威さんが気を失うまで吸ってしまって」
「大丈夫大丈夫。三途の川がちょっと見えた位だから」
「それ大丈夫じゃないやつです」
ㅤすかさずツッコミを入れられた。
ㅤまあ実際三途の川の向こう側に居た知らないおじさんに、「おい神威!お前はまだこっちに来るな!」って言われてた位だったしまあ危なかったんだろう。・・・・・・ところであのおじさん、誰だったんだ?
「そう言えばレリー、今何時なんだ?」
「朝の八時ですよ」
「て事は、10時間以上も気を失ってたのか・・・?」
ㅤどんだけ吸い取られたんだろう。
「その・・・・・・、お詫びと言ってはなんですが、今神威さんの体調に合わせた朝食が出来たので、少しだけ待っていて下さい」
「朝食?」
ㅤ俺の家に朝食なんて作れるものはなかった気がするんだが。
「材料は神威さんが気を失ってる間に買ってきましたよ?勿論自分のお金で」
「・・・・・・なんか、悪いな」
「いいですよ。元はと言えば私のせいですから」
ㅤそう言って、レリーは料理を机まで運んで来た。
「どうぞ」
ㅤ出された料理は、白米にレバニラ、豚汁と、シンプルなものだった。見た目だけでも美味しそうなのが伝わってくる。
ㅤ俺は「ふぅ・・・・・・」と一息ついて机の前に座ると、レリーが先程出した同じメニューをもう一式持って来て、俺の反対側に座った。
「あれ、吸血鬼なのに普通のご飯も食べるんだな」
「いくら吸血鬼でも、流石に血だけで生活はしないですよ。栄養不足になっちゃいます」
「へぇ〜。漫画で血以外を飲み食いしてる所を見た事なかったから何も食べないもんだと思ってた」
「それは漫画だからですよ・・・・・・。まあ、食べますよ。冷めてしまいます」
「おお、そうだな」
ㅤ俺達は手を合わせて合掌した。
「「いただきます」」
ㅤ俺は早速、一番気になっていたレバニラを口の中に放り込んだ。
「どうですか?お口に合えばいいのですが・・・・・・」
「・・・・・・めちゃくちゃ美味しい」
「そうですか。なら良かったです」
ㅤそう言って、少し嬉しそうに微笑んだ。
ㅤと、そこで俺が疑問に思ってた事を尋ねてみた。
「なあ、レリー。そういえば、どうやって俺の家を探したんだ?」
「神威さんのにおいを辿って探したんですよ」
ㅤ犬みたいだな。
「失礼ですね。五感が鋭いだけですよ」
ㅤそう言って、そっぽを向いてしまった。と言うか、
「さらっと人の心読むのやめて欲しいんだけど」
「・・・・・・謝ってくれるのなら許してあげます」
「悪かった、このとおり!」
「はぁ・・・・・・、まあいいですよ」
ㅤどうやら許してくれたらしい。
ㅤ・・・・・・いや、俺悪い事してなくないか?
「ご馳走様。美味しかったよ」
「お粗末様でした。ありがとうございます」
ㅤあれから十数分、俺達はご飯を食べ終えた。
「あ、お皿洗いますね」
「いや、いいよ。折角作って貰ったんだし」
「大丈夫ですよ。これは私からのお礼だと思って貰えれば」
ㅤそう言って、レリーは台所に行った。
「うーん、まあレリーがそう言うならいいけど・・・・・・」
ㅤ少し暇になった俺は久々にテレビのリモコンを持ち、電源ボタンをポチッと押した。画面がパッと着くと、ニュース番組が映っていた。
『住宅街に位置する廃ビルに、一人の遺体が発見されました。その遺体は全身の血液を抜かれていて・・・・・・』
「うわぁ・・・・・・、なんだこのグロいニュース・・・・・・」
ㅤこんな殺し方普通あるか・・・・・・って、ん?待てよ?これって、レリーがやった訳じゃ・・・・・・ないよな?
「どうしました?そんなに深刻そうな顔して」
ㅤ洗い物が終わったであろうレリーにおどおどと聞いた。
「なあ、これって、お前がやったのか・・・・・・?」
「さあ、どうだと思います?」
「どうだと思います?って・・・・・・」
ㅤそんなの、信じたくなくても信じざるを得ないに決まって・・・・・・
「ふふふっ、あははははは!!!」
「何笑ってんだよ!こちとら真剣に」
「ふふっ、すいません。吸血鬼の私にそんな事を聞く人は初めてなので」
「じゃあ、これはやっぱりお前がやったのか・・・・・・?」
「いえ、これは私がやった訳ではありませんよ。ご安心ください」
ㅤそう聞いた途端、一気に全身の力が抜けていった。
「はぁぁぁ・・・・・・、良かった・・・・・・」
「そんなにやって欲しくなかったのですか?」
「うん、レリーにはやって欲しくなかった」
「へ!?そ、そうですか・・・・・・」
「どうしたんだよ、急に顔を赤らめて」
「何でもないです!」
ㅤ変なやつ。
「なあ、レリー。これをやったやつに心当たりってないのか?」
「心当たりですか?うーん、流石にどの吸血鬼がやったとかは分からないですね・・・・・・」
ㅤそりゃあそうか、吸血鬼だからって全員と知り合ってる訳ないよな。
「そうか、ありがとな」
「いえいえ、お力になれなくてすみません」
ㅤこの事件、確証はないが、多分吸血鬼が犯人なんだろう。仮に人間が犯人だとしたら、そんな回りくどい事しないしな。
ㅤレリーの事も含めて、少しずつ吸血鬼について調べていく必要があるのかもな。
美少女吸血鬼と同居する事になりました。 かいみん @kaiminn
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。美少女吸血鬼と同居する事になりました。の最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます