13.禁じられた、お遊び
「ねぇ、
回復の兆しが遠ざかります。訪れた心のリバウンド。
今夜、私はエナメルの匂いのする青い、果てし無く青い「お遊び」に興じなければいけません。
彼は周期的に失調しました。その失調を誰かに八つ当たりするでもなく、ビルの最上階から落下するでもなく、特急列車に華麗に
自殺ごっこ。
何という
そろそろ疑似死を重ねなければ心を保っていけない。
そう感じた彼が願うのです。
破滅的志向の「お遊び」を。
ひとつめにリスカごっこ。
今夜、まさに展開されようとしています。
実際に静脈を切るような
何が楽しいのか、よく分かりませんが、私は看護師よろしく固まったエナメルをリムーバーで落とし、彼の希望とあらば消毒をして繃帯を巻くのです。
ふたつめに睡眠薬ごっこ。
ラムネを呑み込んだ直後、月彦は思い切り嘔吐します。これはアノレキシアの身体にはリスキー。ラムネは案外、高カロリーです。吐き切れない微量のカロリーが体内に貯留することと、嘔吐に使うエネルギーに疲れ果ててしまうことから、しばらく遠退いている遊戯です。
みっつめにダブル・プラトニック・スゥイサイドごっこ。
もっとも健全です。文豪・
あなたの不快な領域には指一本、触れません。綱渡りの
毎回、みっつめのお遊びを希望してくれたら低予算なのですが、よりにもよって高予算で異臭を伴う「お遊び」を選ぶ彼。
心のゲージは不安定に大きく振れている様子です。
「月彦くん、必ず真っ赤なエナメルを買ってくるから、待っていてね。外は雨だし、今日は、お散歩も
「うん、そうするよ。日芽子さん、定時に帰ってきてね」
「定時に帰る。約束」
私はアルバイトの身です。
残業など発生する道理が無いと
約束と。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。