Apathy
風が吹いたら飛んでしまいそうな
晴れた朝の喧騒の中に
私は はっと目の覚めるような 小さな音色を見つけた
そいつは 軽薄な日常が拵えていった
たいそう立派な引き出しの中から
着古した 汚い古着を取り出しては
私の前で とっかえひっかえするので
私は途方に暮れて立ち止まり
もと来た道を 引き返してしまうのだ
くたびれた夕焼けの 煙たいアスファルトの上で
私は 大きな真っ黒い鋏を拾った
ぴかぴか光るきれいな刃に
今朝は きちんと生え揃っていたのに
いつのまにか不揃いになってしまった と
指をさされて ちょん切られそうな気がしたので
私は黒光りする鋭い刃先で
そっと 左手の甲をなぞってみたのだ
鉛筆の削りカスのような夜のとばりの下で
私は 磨いたようにてかてかした
立派な髑髏に出会った
何匹も夜が潜んでいそうな 物言わぬ視線の中で
私は黙ってコーヒーを飲んでいたけれど
そいつは突然ケタケタ笑い出したかと思うと
口だけ残して ふいっと消えてしまった
何か知らぬ悪態をつかれたような気がした私は
なんだか無性に腹が立ったので
そこらじゅうの暗闇を腹いっぱいに満たして
また 生傷が一つ増えた体を
ベッドの上に横たえるのだ
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