あめまぼろし
紺色の雨が街の流れを止めると
そこらじゅうの暗がりに凭れた
ぼろ布のような灰色の影が首を擡げる
やがてそれらが合図のように
濡れたアスファルトに反射したヘッドライトが
今か 今かとじれったそうに
次の獲物を探して這いずりまわる
誰もが小さく悲鳴を上げて
黄昏を飲み込んだ闇の中を踊り狂うように
雑踏をくるくると掻き回しては
何処かへ姿を消してゆくけれど
みんな 自分の身の置き場に困っているみたい
この湿った夜の空気のなかでは
あくせくと歩くなにもかもが場違いだ
スクランブルの途中で 不意に立ち止まる
其処だけが唯ひとりの時間を繋ぎ止めていられる場所
そしてじわじわと世界が歪んでは消える
指先で泡を弾くように
壊れてゆく 雨音だけが囁く街
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます