あめまぼろし

紺色の雨が街の流れを止めると

そこらじゅうの暗がりに凭れた

ぼろ布のような灰色の影が首を擡げる

やがてそれらが合図のように

濡れたアスファルトに反射したヘッドライトが

今か 今かとじれったそうに

次の獲物を探して這いずりまわる

誰もが小さく悲鳴を上げて

黄昏を飲み込んだ闇の中を踊り狂うように

雑踏をくるくると掻き回しては

何処かへ姿を消してゆくけれど

みんな 自分の身の置き場に困っているみたい

この湿った夜の空気のなかでは

あくせくと歩くなにもかもが場違いだ

スクランブルの途中で 不意に立ち止まる

其処だけが唯ひとりの時間を繋ぎ止めていられる場所

そしてじわじわと世界が歪んでは消える

指先で泡を弾くように

壊れてゆく 雨音だけが囁く街




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