黄昏アイロニー

まるで足元の白線上にのみ時差が

生まれ落ちるように

函の中に詰められた子猫の亡骸は

次々と歯車の剥落していくことにさえ

気付かず

造られたことを悔いるように

時を刻み続け喉を鳴らし続ける

高く高く聳え立つ丸い屋上の輪の中で


放課後の回廊に並んだ青ざめた銀杏の木々

の影にも

弓を引く悪意の亡霊が目を光らせている

犠牲の矛先を求め続け まるで

逃れる己を欺き続けるように

追い詰め続けていれば

いつか自分こそが矢面に立たされた

兎だとようやく気付く


満たされた空間の中で蝕むように

疎外されていく二分された踊り場

ハンミョウ達が飛び交う中庭を囲んで

爪弾かれる鍵盤の羽音に

無闇に掻き立てられる寂寞

嗜虐への悶え

いつしか何処かを境に反転

反転を繰り返す

深く深く突き立てられた逆柱になって

見上げ見下ろし

血を流し

帰ることも赦されず


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