夜風

夜明け前に明け渡した

部屋のキーを握り締めて

闇の中耳を欹てる

分かってたさ“もうこれで終わりにしよう”

君の方が先に口を開いたね

この長い夜が明ける前に

止まない雨なら降るだけ泣けばいいさ


部屋の窓硝子を突き破るように

粉々の星々に跳ね返った風が吹く

他人のクラクションに

振り返れるほど若くはない

瞳閉じて顔上げれば

これでいいのさ と夜風がわらう


埋められない時間

砂時計を逆さに振ったって

答えが出せるほど二人無邪気じゃない

“これで最後さ…”と空のグラス振ったって

今日と昨日の溝は埋められない

終電二つ前のホームは疎らに散らかった

エピローグのピリオドさ


二人重ねた日 辿った足跡が

昔傷つけた誰かの傷痕さ

なぞるだけならば 辿るだけならば

哀れむ人などいない陳腐な感傷


躊躇うドアベルに耳を澄ますほど

もう若くないだろうと

夜風がわらう



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