白夜夢

瞼を閉じれば幾つもの幾つもの

飾り窓の中に踊りだす

夕陽の色した影法師

いざないの手から逃れる術を知らず

睡みの上に羽織った灰かぶりのドレスさえ

彼らの食指を誘う

捲いて捲いて

青い風花 捻じ切れるまで

壊れて迷い込んだ白昼夢の中へ


グリーンの空を ブルーの森を

私だけの画廊の中で

錆だらけの鍵束に埋もれたまま

 忍び込んだ黒猫の爪

一番鶏を弄るように

捲いて捲いて

鳩時計 唄い出すまで

唄え 笑え 彼らが門限に気付くまで


迷い込んだ夢の中の泉

歪んだ鏡 笑い続けるアトリの両腕が

真っ黒な嘴で鍵穴を暴く

まだ一度も真赤なトランプは知らないの

泣いて叫んでも誰も悪夢を疑わない

捲いて捲いて

両目から夜が溢れ出すまで

捲いて捲いて

嘘が擦り切れるまで




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