「卒業アルバム」

名も告げぬ人々が残した残酷なポエジーが

踏みしだかれた花弁の上に様々な色彩を

振り撒く

無数の灯に偽られた朝を招きながら

強いられ裂かれた夜を痛みを謳う

コバルトのレコードが全身に廻り続け

オレンジと赤のギザギザが

本当の空の色を海に落とすまで


嘘吐きにだけ開かれる扉の合言葉に

いくつもの真っ白な掌が貼り付いたまま

泥の底に沈んでいく

抗うように贖うように

幾人もの男達の腕へ爪を立てても

二度と此処へは許されぬ呼び名

産み落とされたまま堕とされたままに


在りし日の色鮮やかなポートレイトに

永遠に届かぬ祝福を塗り込めてみても

点滅するブルーとイエローのレコードに

時を欺かれ

凍てつく冬の夜に花開いた

何も知らぬ無垢達が

人知れず無残に刈り取られていく様を

皆よだれを垂らし囃し立てていた

ねえ

あの時

誰も君を

助けようとはしなかったよ



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る