Missing

夜の帳を待ちきれず

霧と共に訪れる 虎落の中の歌声に

触れることも叶わぬまま ただ闇雲に

歪に回り続ける輪に囲まれ

スクリーンノイズの中 いつしか我を忘れる日々

13歳のバースデイに貰った 余所行きのコトバで着飾り

放課後のルールに馴れ合いながら

ただ 訪れる朝の息吹とともに

掛け違えた釦に気づかぬまま

崩れていく 心臓のリズム


ひび割れたアナログ盤の上に降り立つ爪先に

ひそひそと踏み潰されていく 取り残された星々

ひしめき合う灰色たちに一斉に取り囲まれると

厚い雲に閉ざされ 永久に剥奪された

懐かしい夜の面影を唄う

あの歌声を思い出す

取り返しのつかない故郷の原風景に置き去りにしたまま行方をくらました

哀しみを帯びた影絵たちの遠い追憶


忙殺と忘却が飛び交うクロノス・リングの中

やがて電子音と排ガスのカーテンが

街に新たな調和をもたらし

書割の中屹立する混迷の秩序は

真黒の肖像に再び塗り替えられて

いくのだろうか

もう あの歌声は誰の耳にも届くことは

なく



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る