ふたつのフレンス

ヘッドライトに突き動かされ

街の振り子と共に狂った胸の滞りのなかで

ただ吐く息の白さを幾重にも浮絵にした瞳には

歩みを止めた夜の闇すらも眩しくて

遠い何処かで時を忘れたメトロノームに

ある夜突然見失った日常を求めじっと耳を澄ます


致死量寸前の倦怠感を一息で飲み干して

何時間も息を止めて壜の中を漂っていても

数秒後必ず訪れる目覚めへの恐怖は消えず

夜に爪を立て何度も濁った毒を絞り尽くしても

灰色の破壊衝動はいつまでもしがみついたまま

にわか雨になって街の全てを蹂躙したい

癒えることなく流れ続ける退廃色の霧は

立ち並ぶ全てを越えられぬ烙印に変え


持て余された一斉の矛先は決して

顧みられることもなしに

喜びよりも先に苦痛をぶつけてくる

投げつけられた汚れに塗れたこの両手は

いつだって最初の加害者だ

ただ流れ過ぎていくだけの明日の風に

唐突の終わりが落とされたとしても

訪れる目覚めは恐怖を伴い

決して嘲笑を止めようとはしない


  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る