生首

癒えたはずの目印を暴く

饐えた吐息の気配に

正体を見破られた人形は

享楽の篝火にくべられ

晩餐に仕立てられた嬲り殺しの

饗宴

私にだけ灯されぬキャンドル

私だけ満たされぬグラス

鏡台の前に引き立てられた喰滓は

抉じ開けられた瞼の奥に

壊疽した腐傷を突きつけられる


只きらきら光る人工色に

魅了されるがままに

油に塗れた歯車に轢き潰される

蝿のように

廻り続ける幻燈機の前で

昨日されたことをもう一度

繰り返される

お願い

私の首を

返して

身代わりにされた人形は

恨めしげに視線を遠く

彷徨わせたまま


空から月が落ちない

どんなに願っても堕ちない


此処だけが文字盤から取り外され

誰の目にも映らぬ魔闇

首だけが宙に取り残されたまま

幻肢痛に血を流し


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