隠り夜

檻の中産声を知らず生堕ちた朝の戯れに

扉の前で背中に注いだ陽の鱗粉を振り払っても

二度と同じ道は償えない

サーチライトに絆され衆前で焼かれた残唱の中

黄昏にまどろみの手を伸ばす

此処にしか宿り辺のない

顔だけ食べる仮面の獣が

何時までも影を辿って日向陽を口惜しみ

朝露で部屋を汚し去る

毀れたまま忘れ去られた人いきれのなかで

日常が凡てから

ずりおちていく

もう用はないからきえていいよ

私の順が来たときには

誰かの手のなかで冷たくなっていた朝

腹の中で魚を腐らせたまま

律儀に時を刻む濁った時計が

次の朝をまた用意してくれる


まだ誰の目も欺ける夜のうちに

暁の汲み残しを

涸らしに行こう

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る