第2話 妄想劇場
(はぁ~)
ああ、退屈×100。時は、4限目。
古文……外国語かってくらい意味が分からない。ご飯もまだなのに、あくび出ちゃう。
間宮君を見れない時間は、私にとっては、無意味な時間。……って、前に友ちゃんに言ったら、「アンタ、学校に何しに来てんの?」って突っ込まれたけどね。
一番後ろの席から見ると、友ちゃんは結構真面目にノートを取ってる。
私なんて、間宮君のことばっか考えすぎて、この数ヵ月ほど、ろくにノートすら取ってない。次のテストは、明らかに死亡フラグが立つ予感が止まらない。
さあ、こんな訳のわからない外国語(本当は日本語だけど)で退屈な時は、妄想劇場の始まりよ!
私の1メートル先を行く間宮君。
私は、少しずつ少しずつ、距離をつめていく。そして……彼の両目に手を伸ばし、そっと塞いだ。
「だ~れだ?♪」
私はドキドキしながら、彼の次の反応を待つ。
彼は立ち止まって、くすりと小さく笑った。
それから、自分の両目を塞ぐ私の手を優しくつかんで、下ろす。
「
私の両手を握ったまま、振り返る間宮君。
眼鏡の奥の切れ長な瞳が、私だけを優しく映している。
「イケナイ子だな」
私を正面から、見つめる間宮君が、握った手をそのまま引き寄せる。
「あ……っ」
彼の胸の中に吸い込まれる私の体。
「ねぇ、間宮君」
「何?」
「間宮君は……私の物だよね?」
私の質問に、間宮君の唇が、甘く歪む。
「分からないなら……教えなきゃならないな」
間宮君の右手が、私の手を離すと、代わりに、ゆっくりと私の口許に伸びてきた。
そして、私の唇を彼の指先がそっとなぞる。
「麗奈」
「間宮君……」
私は、高鳴る鼓動に、静かに瞳を閉じた。
ああ、私、間宮君と……。
ウフ、ウフフフフフフフフ……ッ!!
「こらぁー!!授業中に、何やってんだぁ!?」
激甘な白昼夢を切り裂くように、野太い怒声が響き渡る。
や、や、ヤバイ……!独り言の
ひきつっていると、古文の先生は、クラスメートの林のところに行って、鬼のように睨み付けていた。
「お前、最前列で居眠りとは、イイ度胸だなぁ!?」
「す、す、すんません!!」
林は、机に頭をなすりつけて、平謝りする。
あぁ、ビックリしたぁ、もうっ。私の独り言が漏れちゃったかと思ったじゃない。てか、最前列で居眠りって、林バカすぎじゃない?
ああ、退屈……。
乾いた唇から、ほんとに、あくびが出た時、4限目の終わりを告げるチャイムが、やっと鳴った。
さあ、間宮君の次に大切なランチタイムよ。
私はお弁当をカバンから取り出すと、食堂にダッシュした。
食堂に行くと、ぞろぞろと他の生徒達も、やってくる。食堂は、パンや、麺類、丼物など、いろいろ売っているから、利用する生徒も少なくない。まあ、私みたいに、お弁当持ってきて、食べる生徒もいるけどね。
(間宮君、来るかな)
入り口付近をじっと見つめてると、彼は、同じクラスの男子何人かと食堂に入ってきた。ちなみに、彼が女子と一緒に連れ立ってきたことは一度もない。一緒したい女子はたくさんいるだろうけど、間宮君は憧れの的ながら、近づきがたい雰囲気もあって、女子と連れ立っているところをいまだかつて見たことがない。
まあ、そういう私も、こうやって遠巻きに彼に憧れてるファンの一人な訳だけどね。
お弁当も、間宮君の姿も美味しく頂いた頃、間宮君は、他の男子に言った。
「じゃあ、先に行くから」
そして、間宮君は、食べ終わったトレイを戻すと、一人学食を後にする。
だいたい、いつものパターンだと、他の男子達と帰ってゆくのに、今日は何かあるのかな?
何となく気になった私は、気づかれないように間宮君の後をそっとつけていく。彼は、なぜか人気のない体育館裏へと行った。
(こんな所に、なんで?)
そう思っていると、思いがけない人物が、後からやってくる。
……えっ……何で……?
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