第2話
あけみは実家に戻り母の無事を確かめていた。
幸い、大事に至らなかった。
とはいえ家屋はひび割れしていて、外側の細い柱が今にも折れそうになっている。リビングにいくと、割れた食器が散在していた。写真をとるとメールを打ち連絡をした。
「こちらも無事です。ですが1週間ほど、手伝います。しばらくはご飯は作れない。ごめん。」
*
忠彦は、落ち着きを取り戻していた。
今後の振る舞いを考えると考え込まざる得ない。
育ての親の死につづき、大地震に被災した妻。
側から見れば不幸の人である。
意気消沈して当然で、多少なりとも錯乱するのは
自然であろう。
しかし、遺産を相続できない以上、彼には何の未練もなかった。憤怒の感情は腹の奥底で煮えたっていたが、制御できている。悠々自適に暮らす手筈はついえ、残ったのは煩わしい人間関係だけであった。
「八方塞がりとはこのことだな」
忠彦は自嘲気味に笑った。
盗まれた贋作 表山一郭 @sosokura
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