第11話 それでも最後に私が……私達が――
僕は知らない、知る筈がない。
彼女は中学生の時に死んでしまったから。
でも、それでも……君を見た時、マキちゃんなんだとわかった。
君が何をしたのか、想像もできた。
君が何事もなく生きられたのなら、僕と同じように技術の進歩を目にしただろうから。
君の髪の色が何を指すのか……わからない筈がなかった。
僕が時間を超えたように、彼女は世界を超えたんだろう。
けれど、どうして――、
「ああ、どうして……」
——そんな道を選んでしまったんだ。
君も、きっと体の半分は機械と挿げ替わっているだろう。
普通の人が手に入れる幸福や当たり前の生活なんて、手放してここにいるんだろう。
君を巻き込んだ僕と、君が好きになったリクから引き離した僕なんかに会うためだけに。
結局、君までも救えなかったんだな、僕は……。
なのに、
「でも、それでも……君が、生きていてくれてよかった」
もう一度、大人になった君に会えたことは……夢のように幸せに感じられた。
救いたい人がいた。
だが、彼女は今も死んだままだ。
加えて、救えたはずの彼女にも僕は自分と同じ生き方を選ばせてしまった。
この手で掬えたものは少ない。
例え掬っても、掬った端から指の隙間を大切なものが零れ落ちていく、深刻な不具合が生じている。
でも、僕はそれを
けれど、だからどうした?
だとしても、やめる理由にはならない。
だからこそと、もう一度やれと自分を責め立てる。
だって、
「大丈夫。きっと、上手くいく……あなたは、私を救えたんだから」
どれだけ多くのものを取り零したとしても、この手に残るものも……確かにあったのだから。
JCちゃんは魔法使いの嘘に騙されない!~発条人型は吸血鬼の夢を見るか~ 奈名瀬 @nanase-tomoya
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
カクヨムを、もっと楽しもう
カクヨムにユーザー登録すると、この小説を他の読者へ★やレビューでおすすめできます。気になる小説や作者の更新チェックに便利なフォロー機能もお試しください。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ネクスト掲載小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます