「ちょっと。なんで死んだみたいな感じなのよ」


「ここに来てから。毎朝、こうしてたの」


「あら。綺麗なめがねだこと。イメージチェンジ?」


「奥手だから。めがねなの。わたしは、奥手なままでいることにしたの」


「そう。綺麗よ。めがねをしてても」


「ありがと」





「おかえり。退院おめでとう。きみの好きな料理。用意しておいたよ」


「おっ。スクランブルエッグとカツカレー。ありがとう。大好きだ」


「僕もさ」






「そうか。おまえの好きな料理か、これは」


「二つのことなるものが、混じり合うからな」


「おまえも、そうだよな。二つのことなるものが、混じり合ってる」


「ばかにしてんのか?」


「綺麗だって言ってんだよ。手術が成功して、晴れて両方とも持ってるわけだし」






「おかえり。待ってた。ずっと。ずっとずっと。待ってた」


「ありがとう。ただいま」


「好き。大好き。みんな大好き」


「わたしもよ。ここにいる全員が、好き」




 五人。


 それぞれが抱きあって。


 頬にキスを交わして。


 日々が始まる。


 五人で生きる日々が。

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すれ違う四人、いない五人目 春嵐 @aiot3110

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