振り子から考えるバッティング理論

天津 虹

第1話 振り子から考えるバッティング理論

野球という競技を知っているだろうか。


そう、知っている。では、他の球技との違いはなんでしょう。

 大きく違うのは、他の球技は、ボールが動くことによって点が入り、野球は人が動いて点が入ることだろうか。

 また、野球は逆転の競技と言われているように、他の球技では、ワンプレーで一点しか入らないが、野球は最大4点が入る。


 でも、基本的な技術でいえば、道具を使うことだろうか。


 テニスや卓球、バトミントンなどたしかに道具を使うが使い方としては、手の延長として使う技術が発展しているようです。


 野球と同じで道具を使う技術が試されるのは後はゴルフぐらいですか?

 

 それでは、本題にははいりましょう。


 野球の技術書を見る限り、バットの使い方を解説している書物は驚くほど少ない。

 バットは高校野球では1kg弱。しかも重心の位置が手元から離れている。にも関わらず物理法則を考えてどうしたらヘッドスピードが速くなるかということをかいた本は読んだことがない。もしあるという人にはごめんなさい。

 ある本で、円運動と衝突運動について書いていて、ヒットした偏差値の高い野球小説があったが、体ごとクルクル回して打つなんてナンセンスだ。ゴルフならまだわかる。


この本を読んで本当に物理法則に従ったバットの振り方を考えた結果、次のように考えをまとめてみました。


 まず、写真や図で説明できないのでイメージをしてほしい。


 まず、振り子を用意してください。振り子の重りの部分がバットの心です。

 その重りを振り子の円に沿って持ち上げて落としてください。

 落下運動です。そして支点(手で持っている所)の下部を通過するときに最大速度になります。これがスイングの基本です。バットの重心を落とす。

 バットの心を落とすためにはどうしたらいでしょう。バットを持っている手を水平に動かせばよいのです。

 実際にやってみてください。バットを肩のあたりに傘のように立てて持って、グリップを水平に引っ張るとバットの重心は自然に落ちてきます。


 ここで、振り子に戻ります。

 落下して、支点の下部を通過するときの速度をさらに上げるにはどうしたらよいでしょう。そうです。支点を平行に引っ張ればよいのです。


 これで、落下速度+水平の移動速度の速さが得られ、しかも、最大速度の幅も長くなっているのがわかると思います。

引っ張るときには、バットは重いので体を使いましょう。そうです。上から垂れているひもを肩から斜め下に引っ張る要領です。脇を締めましょう。その時、右打者なら右脇を占めましょう。右ひじがユニホームのチームネームの右端に着くぐらいがベストです。肘と体がちょっと重なったぐらいです。


よく指導書にかかれている右打者が左脇を締めるのは、経験上あまり関係ないと思います。また、右手で引っ張るより綱引きのように両手引っ張るでいいと思います。ただ、次の左手の引きの時には、脇は閉まっていたほうがいいでしょう。


 水平移動は、体の平行移動を使って行います。これがいわゆる踏込です。

 


 体を平行移動しながら、グリップを引っ張る。バットの重心については、特に考えなくてもしっかりスイングの軌道をしてくれます。


 さて、バットを引くときの初動速度をさらに上げるにはどうしたらよいでしょう。バットのグリップは、最初は手の力のみで引っ張り、その後、体の平行移動で引っ張るようになります。

 そうです。初動はどうしても腕力に頼るようになるのです。

 だとしたら、バットの重さをなるべく感じないようにすれば、いいのです。


 かまえから、いわゆるトップを作るとき、右打者の場合、右側に体及びグリップを引きますが、グリップを引くときに、なるべくバットのヘッドはトップの位置から動かさないで、グリップだけを引くようにするのです。


 この時、バット全体を引く癖のある人は、ヘッドスピードはまず、上がりません。それにバットの重心をボールに向かわせてしまうため。ドアースイングになりやすいです。


 これで、初動時はバット全体の重さではなく、グリップの重さだけを引くようになり、早く、軽く引けるようになります。


 これで、バットのグリップを引っぱってきて、トップスピードに乗っていきます。


 ここから、さらにインパクトのヘッドスピードをあげるためにはどうしたらいいでしょう。

 

 ここで、振り子のイメージに戻ります。


 支点を水平に引っ張ってきてここで支点をピッタと止めることで、支点の運動エネルギーが振り子の重り部分に移り運動エネルギーが増し、さらに重りの速度が加速します。


 そうです。これが、よく言われる右打者でいう左側に壁を作るの意味です。

 今まで、引っ張ってきたからだの動きを止めるのです。これで平行移動から回転運動に変わるのです。エネルギー保存の法則から言えば、平行移動のエネルギーをどれだけ大きくできるかでバットのヘッドスピードが決まるのです。


 支点を軸にした回転運動では、円盤投げのようにスピードを上げるためには、何回も回転しなければなりません。

 一回の動作で上げられるスピードは知れています。また、何回も回転していては、バットにボールは当たらないでしょう。


 さらに打ったボールを飛ばすにはもう一工夫します。


 また、振り子のイメージに戻ってください。


 支点を止め、さらに、支点を引き戻してください。さらに重りの速度が加速しているのが、わかるでしょ。


 これが、引き戻しです。引き戻しに係るエネルギーがさらに重りを加速させます。


 日本ハムの大谷選手が「投げる球のスピードを上げるため、最後フィニュッシュで、踏み出した右足を足の大きさの半分(多分十数センチ)引くことを心掛けている。」というインタビューを聞いて理に適っていると思いました。それで、コントロールを維持している所がすごいと思います。


 まず、最初にしてもらうのが、左手の引きです。手首を返すというのですが、グリップした左手を体側に引き戻すことで、勝手に手首が返ります。あまり、右手を返すことを意識する必要はないと思います。かえって、右手で押してしまい完全に支点が停止できずエネルギーロスが発生します。


 次ぎにこれができれば、完璧です。ホームランバッターになれると思います。

 止まった体を引き戻すのです。大谷選手のいうことと同じで、やれば、大きなエネルギーが得られますが実際にできる人は少ないでしょう。

 メッツの松井秀樹選手のフォロスルーの時に重心が残っているように、上半身が反り返っていますが、分解写真を見る限り、ちゃんと踏み込んで体重移動していますし、上半身を引き戻していると思われます。


 ここまで、特にバットの回転のことを言っていませんが、エネルギー保存の法則からいって、今までの一連の動作の中で、必ずバットは回転します。実は振ることをあまり意識する必要はないと考えています。


 あと、ボールとバットの衝突ですが、これは、衝突運動は直線運動です。ボールとグリップが一直線に向かうイメージを意識して、引っ張っていくグリップをボールに向けることでかなり衝突できる確率があがると思います。


 バットは手の延長ではありません。長すぎて重すぎます。


 楽しく野球をするためには、打ちたいし、長打がでるとうれしいです。

 これは、野球というスポーツのバッティングに物理的視点を持って解説しました。

 一部の子供には実際指導して一定の成果があったようです。

 これは、個人的な感想であり、全員に効果が出るかどうかもわかりません。

 ただ、物理法則から考えたバットのトップスピードをさらに上げるにはどうしたらいいかを考えた結果です。


 では、もう一度 振り子を使っておさらい。


 振り子の重りを振り上げる。→ バットを構える。


 振り子の支点を重り側に少し寄せる → トップを作る。


 振り子の重りを離し、同時に引っ張る → グリップをボールに向かって引く。


 振り子の支点を止める → バッティングの壁を作る。


 振り子の支点を引き戻す(ヘッドスピードが最大になる) → バットスイングをする。


 ね。振り子では間違いなく重りの通過速度が速くなるでしょう。


 以上 プロでも専門家でもない者のバッティングの考察でした。


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