03 音 (終)

「良い音を聴かせてもらいました。また会いましょう」


 闇。声。今度は、はっきりと聞こえた。大人の女の、声。


 闇が、闇に融けて。消えた。


「辻斬りか」


 あの女。


 どのような気持ちでこの街を見て。


 どのような気持ちで刀を振るっているのだろうか。


 相手の、折れた刀。光を失って、その場に刃が落ちている。


 刃の光。電気、だったのだろうか。久しく見ない輝きだった。


 そして。


 はじめて、気付く。


 今まで。立合に集中していて、わからなかった。


 耳。


 音が聴こえる。


 懐から、取り出した。


 音楽プレーヤー。


 充電表示。1パーセント。


 長らく聴こえていなかった、電子の響き。自らが命を賭して、かき出した音。


 それは、だんだんと小さくなっていき。


 やがて、充電ゼロパーセントの表示とともに。


 消えていった。

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斬撃、光、音 春嵐 @aiot3110

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