バル@小説もどき書き

死は恐怖するものではないのです‼︎

 皆様、初めまして。私、“クロ”と呼ばれているものです。

 はてさて皆様、夢の国をご存知でしょうか? そちらの世界にあるテーマパークではなく、皆様が寝ているときに訪れている夢の国の方です。


 夢の国は良いものですよねぇ。何も考えずに、何もせずして、楽しさや喜びだけが無限に供給されるのです。素晴らしい世界ですよね? 苦はなく辛いことも存在しないのです。


 そんな世界になんの代償もなく、ただ寝るだけで行くことができるなんてなんと羨ましいことか。


 まぁそれは種に言えることであって個に言えることではないですね。個は個として独立していますからね。貴方方人類というものはとても複雑に個が形成されている。


 中には眠れない人や悪夢を見る人もいることでしょう。

 なぜそうなるのか分かりますか?

 その方々は今生きる世界に執着する強い思い、意思があるのです。それが夢の国へ行くことを拒んでいるのでしょうね。なんと勿体無いことを。


 逆に起きられない人、常に眠いような人は今の世界に思うことがないのでしょうね。今の世界に戻ってくる意思が弱いのでしょう。そういう方々は早く夢の国へ移住することをお勧めしますよ。



 ところでところで、話は少し変わりますが、皆様は死ぬことは怖いですか?

 死に恐怖を感じますか?


 大抵の死への恐怖というものは死に至るまでの過程にある痛みや苦しみを恐怖しているのです。つまりは“死”そのものが怖いわけではないのです。


 死んだ人のことを“永遠の眠りについた”と例えることがあると聞きましたよ。的を射ていますね。良い例えです。


 死の先に何があるのか、考えたことはありますか? 転生? 消滅? 天国か地獄?

 non non

 死の先にあるものは全生命体共通、幸福のみです。

 永遠に夢の国へ行けるのです!

 これほどまでに素晴らしいことはないでしょう!


 睡眠が夢の国への旅行だとすれば、死は夢の国への移住です。

 夢の国へ移住すれば負の感情は溶け、負の記憶は消滅する。永遠に幸福が与えられるのです。


 今の世界に思うことが無くなったとき。

 今の世界に不満しかないとき。

 今の世界が嫌になったとき。

 夢の世界の永住権を得られることでしょう。


 死は恐怖するものではないのです‼︎


 それなのに楽に死ぬ方法がないが故に死を恐怖する。なんと残念なことか。



 自ら死を選ぶ権利が貴方方にはあるのです。



 死したとき、もし何か思い残すことがあったとしても心配する必要はありません。今の世界のことなどすぐに忘れてしまうでしょうから。安心して永遠の快楽に浸ることができます。



 いやはや、私の話を聞いてくれる生命体は久しぶりなのでついつい長話してしまいましたね。


 大抵の人は私の見た目、黒いローブに奥のない瞳、動かない口に響く声、生命の直感で感じ取る異物感などによって話を聞く前に逃げ出してしまうのでね。


 貴方には特別に夢の世界の永住権を私が発行して差し上げましょう。

 夢の世界に移住したくなったら是非、私のところまでお越しくださいね。

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