「もの覚えがいい子だねぇ~」
「それで、空間消去の説明だけど――」
本へ視線を落としたまま、何やら見せたいページが見つかったのか、グレアは今一度手招きをする。
「実はこの空間――というかこの図書館、本以外は実態が無いんだ」
その言葉をとりあえず思考に回した結果、彼女の脳内には『本以外は魔法で作られている』という論が返ってくる。
「つまり……並んだ棚は、実は虚像……ですか?」
「あー、まあ惜しいかな。でも虚像っていうのも半分合ってる。例えばね…………じゃあ、あの本棚を見てて」
指の先にある、他より一回り小さい本棚に視線を送る。
グレアが指を弾いた瞬間に魔力が揺れ動く、魔法独自の現象を肌で感じ取り、それと同時に本棚の中にあった本は垂直に落下する。
本棚を摺り抜けて。
だが奇妙なことに本は無造作に落ちず、背表紙が揃って積み重なった。
「今、あの本棚の本にかかってる浮遊魔法を解いたんだ。それで本棚に実態はないから、ああいう風に本棚を摺り抜ける。もっとも、棚の魔法を全て解いた上でのことだけどね」
要は本には浮遊魔法、棚は虚像魔法がかけられている、ということ。
そしてグレアがその魔法達を解けたのは他でもなく、魔法解除の主導権を持つ――――魔法をかけた本人だからである。
これがこの広大な空間においた全ての本棚と本にかかっているとすれば。
「改めまして――――全国魔法連合会、技術部門創設者、
全国1を持っている、ということを念頭に置いてほしいらしい。
だがそんなことは言われる間もなくできる。
「…………御見逸れ致しました。ご容赦を」
「畏まらなくても大丈夫さ。その称号を持っているからこそ、こうやって本を読むのが好きなだけだからね。何か気になったことがあれば力になるよ、奴隷ちゃん」
「…………分かりました。有難うございます」
一礼をすると、グレアがリースを転移魔法でこちらに飛ばしてきた。
さすがに驚いたのか、今の今までいた空間から景色が切り替わったことに目を丸くする。
「随分物覚えがいい子だよ。可愛がってあげな」
「……お前に言われる日が来ようとは、な。まあいい。二人共時間を取らせて貰った。すまない」
「いやいや~。こっちも久々にしっかり説明できていい気分~♪」
親しげに会話する二人は、王と宮廷魔道士などという堅苦しい関係ではなく、幼馴染のようにさえ思った。
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