少女との出会い

 かくして都合のいい紆余曲折など全く無く、ウダウダゴロゴロして経過した約3時間。



 (来てしまったな…………。時と俺がこの場所に。)



 いかにも言葉選びの格好良さで感傷を誤魔化しましたという自念の表れだがそんなことを突っ込んでいては心が保たない。というところまでを心の中で呟いて。

 今は、ただただ奴隷の姿を予想する。これがまあ彼にとってのこの瞬間の唯一の暇つぶしなのだろう。

 暇を持て余す長い思考と言いたいところだが、こんな暇は訪れてほしくないのでそういうわけにもいかないのだ。


 (言うて戦争起こしたくないし、死人も出したくないから回復系統の魔法が得意な奴の方がいいな…………。あとは戦嫌いとか……俺に反抗的に成られても困る……。やっぱエルフって適任なんだな…………。)


 注文が多いのはある種当然なので敢えて触れないことにしておき……。

 その間も、もちろん時間は止まりはしない。


 早く終わらせてくれないかと思っている矢先、右横の扉がゆっくりと開き、一人の少女が目に映る。

 やっと御対面か、と、以前ならつまらないようにそう思っていたのだろうが。



「………………!?」



 まず頭から生えた狐型の耳が目に入る。つまるところ獣人ビースト種である。

 だが獣人はそもそものところ、寿命があまり長くない。長生きする血族でもせいぜい200年が限度だという記録が残っている。

 全ての血が不老の種族ではあるが、まさに奴隷に向かない種族として見られている。


 また外見面では、体格がかなり小さいままで成長が止まる種族が9割以上を占めていて、一言で表せば『幼女』。

 故に普通の奴隷とは扱いが違う、『性奴隷』や『愛玩具』というレッテルを貼ったことを前提として売られることがかなり多い。


 ――と、こうも長ったらしく、驚愕の根拠を述べることはできたのだが、そこではない。



 もう一つの理由は、紫色の髪。



 発生確率の数値こそは出ていないが、いずれにせよ全種族を見ても大変稀である紫色の髪。

 世界中の数ある神話の『神』や『神の子』、『神の使い』は紫髪で描かれていることが多いことが相まって、基本的にはその一族の長や、崇める対象として扱われるのだが――――。



 そう、それが何故、『奴隷』として此処に或るのか。

 頭を巡るのはその疑問だけ。全ての予想を覆された全員はその場で長考に潜る。



 この紫髪の獣人は特に何も感情を表すような仕草は見せず、ただただじっと待っている様子だった。


 一言で表せば、まさに『感情の喪失』。

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