孤独な王の小さな悩み
さぁ舞台はとある銀河系に存在する地球。
その一角に存在する、面積こそは小さいが多種族が賑わう国――『ライル』。
世界有数の大型国だが、実際の所は建国から100年ほどしか経っていないという、世界で見ても発展のとても速い国。
だがしかし大体の他大国ともさほど大きな距離はなく、また国を渡る時の航路上にも危険な地点が一切ないことから、言わば輸入品の中継としての利便性が高いことで注目されているのだ。
さらにこの国には、他の国にはない特殊な法律がある。
さらにさらに言えば現ライル王は、死ぬほどそれを嫌っている。それが――。
「『5年に1度、王族は奴隷を無償で得られる権利を与える』ねぇ……」
1人の青年が、法律を示した一覧書の1つの頁を見て、そう呟いた。
今呟きを発した、ソファにだらしなく寝転がっている人物は、それこそ現在のライル王。名はリース。
今彼が言ったものこそ、この国のみに存在する特殊な法律、ということだ。
「奴隷制度嫌いっていったらバッシング来るからなぁ…………ウェル……俺どうしたらいい?」
「それオレに言われても分からんし対処できんわ! 以上!」
「少しは考えてくれよ…………」
寝癖だらけの茶色の短髪を揺らし、無駄に威勢がいい話し方をするのが、リースに対して敬語を抜いて話すことの出来る少ない人物の一人。名はウェルサ。
リースからは『ウェル』という愛称で親しまれている彼は、子供の頃からリースの友達として関わっていて、気も噛み合っていないわけではないため、こうして互いに表舞台には見せない姿で居られている。
今二人は、遮音魔法と認識阻害魔法がかかった部屋でくつろいでいるのだ。
この国は言わば合衆国であり、
そしてその中でも特に寿命の長く、且つ頭の良いエルフ種が奴隷として売られることが定石だった。
リースの得た奴隷で未だ生き残っているのは全てエルフ。この事実は何よりも奴隷界隈の情勢の大方を物語っていると言っても過言ではない。
つまるところ、今年も森精が奴隷役に駆り出されるという予測は9…………いや、10割方の人物が持っているだろう。
だが『奴隷』という立場が嫌いなリースはそんなことお構いない。そもそも根本的に解決されていないのだから。
「んなことどうでもいいっつの…………何時に御対面だ?ウェル」
「えーっと……11時だから、あと3時間だな。ほらほら、精神的苦痛より民が優先だって言ってたのはお前だろ。職務全うぐらいしてこいよ」
このストレートな意見はしっかりとリースの心に突き刺さり、踏ん切りが付き始めたのかゆっくりソファから体を起こした。
――これが職務なのかどうかはおいておくとして。
と、兎に角と言ったようにリースが立ち上がって部屋に無言で戻る様を、ウェルは手を振って見届けていた。
「…………はぁ……」
深々とため息をつくのも、これで本日三回目だ、ということを噛み締めつつ。
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