第5話 引越し



 戦闘から50分後。

 私は、自分の部屋を引っ越している。

 と言っても、材料を運んでいるだけ。

 え?どこにかって?

 そりゃあ、第1層の上。

 要するに、ダンジョンとは逆の方向に作った。

 さて、こんな独り語りはそろそろやめにして、目の前のものを見る。

 木製の椅子(丸太)とテーブル(天板が平らにされただけの岩)に、ベッド(丸太を縦に切って、それをいくつか繋げただけ)がある。

 うん。天然素材100%だ。

 豪華……では無いな。

 壁は岩岩岩。足元も岩。足裏痛え……。

 翼もいろんなところにガンガン当たるし、尻尾も普通に踏むし。

 正直、疲れたという概念がなかったら、この身体のパフォーマンス度を表すのに、喉を潰すことすら余裕でできる気がするほど疲れた。

 何言ってるんだろう、私。

 てか、このダンジョン、本当に何も無い。

 宝箱?そんな高価な物、こんな辺鄙なところに置いてあるわけない。

 え?冒険者の防具とか?全て壊れているため、犬も食わない。いや、スライムですら食わない。

 本当にダンジョンなのか疑いたくなる。

 あれ?まず、ダンジョンってなんだろう……。

 ま、いいか。

「やはり……」

「ん?」

 突然、後ろから声がした。振り向くと……

「ガルゴエラっ!?」

「やぁ……よくもやってくれたね」

 ガルゴエラは、少し怒気を含ませた声で、私に言う。

「私が何かしたのか?」

「やりまくりだよ。神の魔力でこんなもの作り上げて……神罰に値するよ」

「はぁ?」

 神の魔力ってなんだよ。

「え、もしかして知らない?君と私との間で魔力のパスがあってだね。私の魔力を使っていたってことだよ」

「いや、全く知らん」

「マジか」

「マジだ」

「嘘じゃないよね?」

「嘘などつく必要あるか?」

「………」

「………」

 なにこの状況。

「はぁ……つまり、私の失態ってこと……はぁ……でも神罰は与えないといけないし……」

「どうかしたのか?」

 突然独り言を言うなんて……歳か?

「歳じゃねーよ!!」

「あ、そう」

「はぁ……リアリリス。君は、今、一番何を望んでいる?」

 は?また突然話変わりやがった。いや、一回目か。

「人間と仲良く暮らしたい」

「なら、神罰を二つ与えよう」

「何故に!?」

「君には、魔族に好かれる様になってもらおうか」

「無視!?」

「でも、それだけだと足りないから、もう一つ、そう。もう一つだ」

「虫!?」

「え!?虫!!ぎゃぁぁぁぁぁ!!」

 何これ!めっちゃでかい虫なんですけど!!黒光してるし!!もしかしてGですか!?

「これ、Gじゃん!!リアリリス、どうにかして!!」

「無理だ!!逃げろー!!!」

 この後、ガルゴエラと共に、ダンジョンの中を走り回った。


「ぜぇ……ぜぇ……」

「なんで、こんなことに……」

「知らない……」

 逃げ回って、Gがどこかに行ったから、尻餅をついて休んでいる。

「さて、もう一つ、君には苦行を与えよう。サキュバス!!」

「え!?」

 もう一つ!?

「さてと……それじゃあ」

「あ、待てコラ!!説明してから逃げやがれぇぇ!!」

 ………どこかに消えた。さす神……。(さすが神様の略)

「はぁ……なんでこんなことに……」

 天井を見ても、土しかない。いや、岩もあるか。

 私は、地面に寝っ転がって、うたた寝した。


「さて、ここら辺よね?」

「えぇ。そうね。ここら辺から感じたわ」

「そう。なら、早くその候補を探さないといけないわね」

 ダンジョンの外。森の中の3つの人影は、尾を持ち、翼も持つ。

 そして、何よりも、悪魔的なツノがある。

 そう、サキュバスだ。

「あのダメな魔王様の次を探さないとね」

「いつまでアレを娘と信じているのかしらね」

「普通に結婚したらいいのにねぇ」

 3人のサキュバスは、そんな話をしながら、森の奥へと進み、ダンジョンを目指していた。

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魔族として生きる 紙鳶音虎 @shienneko

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