けが

 翌日の月曜日。

 体育。つまりプールの授業。

 冷たいシャワーで身体を冷やした後、プールへと移動する。


「うぉっ!?」


 しかし、何故かぬめっとしていた地面を踏んでしまい、加えて、足も濡れていたので、そのまま、おれは後ろ向きに地面に倒れてしまった。


「いて……!」


 幸いにも頭はぶつけずに済んだが、地面がコンクリートのため、転倒の際にヒジをすりむいてしまった。


「大丈夫か!?」


 先生が慌ててやってきてくれる。


「ヒジをすりむいたみたいだな……軽い怪我だとは思うが、念のため、保健室に行ってこい」


「はい、すいません」


 先生の手を借り、ゆっくりと立ち上がると、周りのクラスメイトが心配そうに見守る中、おれはそのままプールから出ていった。


「……」


 そして、その中でも特に心配そうに見てくる視線が一つ。まぁ誰かはわかりきっている。

 大したことはないだろうし、後で心配かけてごめんって言わないとな。












 ♦︎










「失礼しまーす」


 おれは怪我した部分をタオルで拭き、シャツの袖の部分をめくり、血が周りにつかないようにした後、保健室のドアをノックした。


「あれ……」


 しかし、そこには誰もいなかった。


 先生、どこかに行っちゃったのかな。

 おれが後頭部を手で抑えながら、先生の机の前に近づくと、書き置きがあった。


「所用で離れてます。自分で処置できるようならご自身でお願いします」

 と書かれていた。


 自分でか。まぁ、これくらいなら傷薬で消毒して。絆創膏でも貼ったけば大丈夫か。


 そう思い、おれが戸棚にある薬箱を取ろうとした時、保健室のドアが開いた。


「優君……」


「え、穂花……?」


 何故か制服姿の穂花がそこにはいた。

 それに肩で呼吸をしており、かなり息を切らしているようだった。


「どうしたんだ……?」


「優君が心配で、追いかけてきちゃった……」


「それはありがたいけど、授業は……?」


「500mくらい泳いできたから免除してくれた」


「アスリートかよ」


 さすがハイスペック美少女。

 しかも、この短時間でってのがすごい。


「それより、手当てしないとね」


 言いながら、穂花は戸棚に近づき、薬箱を取り出す。


「あ、ああ、ありがとう……」


 まさか、穂花が来てくれるとはな……

 まぁ嬉しいことは嬉しい。


「あれ……?」


「どうした?」


 穂花が困ったような声を上げた。


「消毒液がない……」


「あ、そうなのか?まぁ別に無くてもいいよ」


「ダメだよ!バイキンが入って、優君が……死んじゃうもん……!」


 そう言って、穂花はおもむろにおれの肘を掴む。そして。


「れろっ……」


 その柔らかい舌でおれの怪我をした場所を舐め出した。


「ちょ、何を……?!」


 突然走るその感触におれはたまらず、目を見開いてしまった。

 何してんの、この子!?


「消毒中……んちゅ……はい、終わり」


 そう言って、穂花は離れていった。


「んふっ、優君のおいしかったよ……?」


「え、あ、そ、そうか……」


 おれは顔が赤くなりすぎて、どうにかなりそうだった。

 何がおいしかったんですが、穂花サン……


 その後、おれは穂花と共に教室に戻ったのだが、顔の火照りは当分収まらなかった。

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おれのクラスには超絶完璧美少女が存在しますが、彼女はおれから離れると死んじゃいます あすか @gantz001

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