怒りを心のままに
「こことかいいじゃん」
駅前から少し離れたところにある廃墟におれ達はやってきた。
なんでこんなところに都合よく廃墟なんかあるんだよ。絶対殴られるやつじゃないか。
おれはたまらず、ツッコんでしまう。
「……!」
おれがそんなことを思っていると、腹部に鈍い痛みが走った。
くそ、いきなりはなしだろ……
悔し紛れにそんなことを思いながら、おれはゆっくり地面に倒れていった。
「優君!」
おれの後ろを歩いていた穂花がそう叫ぶ。
「あー、少しはスッキリしたかな」
おれを殴ったチャラ男は楽しそうに言った。
「オレの誘いを断ったんだからな、これで済むと思うなよ……?」
「ははっ、それはこっちのセリフだ……」
「あ?なんだ?お前が相手になるっていうのか?」
「ああ、相手になってやるよ。但し、おれじゃなくて、穂花がな……」
「はぁ、何言って……」
そこまで言ったところで、ドサっと誰かが倒れる音が聞こえてきたので、チャラ男なそちらの方に顔を向けた。
「な、はぁ……?」
信じられないと言った様子で口を開けている。
どうやら、炸裂したみたいだな……
おれはたまらず、笑みを浮かべ、ゆっくりと立ち上がった。
「許さない、よくも優君を……」
後ろを振り向くと、チャラ男の取り巻きの男達をあっさりと倒した穂花が立っていた。
気のせいだろうけど、身体の周りにオーラが出ているように見える。
「ふ、ふざけんな!女なんかに負けてたまるか!」
チャラ男が言ったそれは捨て台詞にしか聞こえなかった。
「……」
しかし、一気に間合いを詰め、チャラ男の腹部に鋭いパンチを放つ穂花。
「あ……」
そして、白目を向きながら、地面に倒れる。
「相変わらずの強さだな……」
おれは苦笑を浮かべ、穂花の元に近寄る。
「あーもう!せっかく楽しくデートしてたのに台無しだよ!」
恨めしげに倒れている男たちを見ながら、穂花は言った。
「それじゃあ、口直しってわけじゃないが、パフェでも食べに行かないか?穂花、パフェ好きだろ?」
「あ、うん!いいね!いこいこ!」
たちまち満面の笑みになって穂花はおれの腕に抱きついてきた。
しかし、女の子に守ってもらう男ってのも情けないが、穂花の格闘スキルが異常だから、そこは勘弁してほしい。
今までもこうやって絡ませては、穂花が撃退してきたのだ。
しかし、穂花のリミッターが解除されるのは決まって、おれが傷つけられた時だけだ。
それまではなんとかおれが相手をするが、今回は向こうがいきなり手を出してきたから、仕方ないよな。
はぁ、しかし、腹が痛い……
アザになんなきゃいいんだけど……
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます