第24話 新顔が来てもやってることは変わりません

 至分の試練、二日目が終り、三日目の夏至の朝が来た。

 これまでに試練を受けた者は、初日のゼファールを除き、全員合格している。

 つまり、最終日五日目の再挑戦に臨むのは、現在ゼファールのみということだ。


 ノゾムは、牛頭人身ミノタウロスゼファール、鹿獣人ダンカンと対戦し、二勝している。ダンカンはノゾムとの試合には負けたものの、試練を合格しており、ゼファールの試練不合格はノゾムが勝ったせいでは無いとわかってはいるが、やはり気になる。


 ゼファールは反省したのか、東の砦の幹部やクルシアス配下の格上の獣人達に手合せを申し込み、地道に修行を積んでいた。


 ノゾム達は、狩りの割当てをされただけで、それも早々に済ませ、昼には砦に戻って来ていた。

 

 砦にノゾム達が入るのと入れ替わりに、『茶影ブラウンシャドウ』チャタが慌てた様子で出て行く。


「いい所に戻って来ましたね。獲物を置いたら、また広場にお願いします。五日間の

至分の試練で、三日連戦は珍しいですが、皆さんは運が強いようですね」

 にこやかなポーシュの物腰が、一癖ありそうな難敵を匂わせている。

「新たな至分の試練の挑戦者が、また来たのか?」

「至分の試練の三日目に、西の砦の五芒星将ペンタグラム最強『五つ星クィンティプル』サクレイ閣下の配下、ムリュース殿が、至分の試練に挑戦に来られると先触れが来ました。魔将級の試練は通過している方なので、上級魔将級への挑戦か、その配下の誰かの挑戦の立会でしょう。蓋を開けてみないと分かりません。ただ、至分の試練の初日と二日目に来なかったと言うことは、五日目の再戦は不要と考えていると言うことでしょう」

 余程の自信の現れか、逆に自分を追い込んでの挑戦か、どちらにせよ、油断ならない相手に違いない。



 これで他の五芒星将ペンタグラムからの配下の挑戦者は、全て揃ったことになる。

 

 昼過ぎにムリュースは、少人数の部下を連れ、砦に到着した。


「西の砦の五芒星将ペンタグラム、『五つ星クィンティプル』サクレイが配下、『剣魔将ソードマスター』ムリュースが至分の試練にあたり、ご挨拶申し上げます。東の砦『一つ星シングル』の五芒星将ペンタグラム、ライザーム閣下に、我が配下パラドスに試練を与えて頂きたく罷り越しました」

 ムリュースの後ろから、配下の魔人が一人進み出る。

「西の砦ムリュースが配下、『風影剣ソードオブエアシャドウ』パラドス、東の砦の五芒星将ペンタグラムライザーム閣下にご挨拶致します。どうか、この新参者にも、至分の試練を賜わりますよう、お願い申し上げます」


 昨日までと同じく、ライザームの映像が運ばれて来た水晶球から投影されている。


「只今の口上に嘘偽りが無ければ、至分の試練を与えるに相応しいか、考えよう。暫し、待たれよ」

 いつも通りのライザームの返答であるが、やや精彩を欠く。

 試練を与えるか否かの即答が無く、対戦相手の指名も無い。


 現在魔人級のパラドスの試練は、魔将級の最初の試練となる。今回の至分の試練トライアルでは、既にポーシュとノゾムは二戦しており、今日も出番があれば三連戦となる。わかりやすい対戦相手としてはもってこいだが、他の候補を選ぶべきか。


『行けるか? ノゾム』

 ライザームからの遠話がノゾムに届く。

『三連戦になるけど、いいの? 私としては、パラドス殿の『風影剣』がクローチ殿の使う『風影槍』の流派なら、昨日アレを視た私には有利な気がするけど』

『それも一理あるな』


「パラドスよ、汝の業、『風影剣ソードオブエアシャドウ』は、東の砦『無影槍シャドウレス』クローチの使う黒魔槍・風影槍ブラックスピア・エアシャドウと同系統の業、今回、既に他の挑戦者達はそれを視ている。それ故、この挑戦は一層難しいものとなることは、わかっているか?」


「東の砦のクローチ殿をお見掛けした時から、そのようなこともあろうかと思っておりました。ただ、今の私の力量を見ていただければよろしいかと心得ております」

 パラドスは淡々と答える。


「その意気や、良し。西の砦『風影剣ソードオブエアシャドウ』パラドスに、至分の試練を与える。召喚勇者ブレイブノゾム、パラドスの相手をせよ。殺してはならぬ。それ以外であれば、傷は東の砦の『守護者ガーディアン』ベリーヌが癒す。それでは、始め」

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四天王が倒せません 大黒天半太 @count_otacken

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