第23話 雷が真っ直ぐ飛びません
広場の中央ほどに対峙するように、鹿獣人『
甲冑姿の両者だが、ダンカンは両手に長剣を構えた上に角がそびえており、対するノゾムは神殿から授けられた聖剣と盾を構えている。
「『
様子を伺うように、ノゾムは突きから左右から変幻自在に剣を振るい、ダンカンはそれをあしらうように、両手の剣でパリィしていく。
大上段からの一撃は、剣でなくその角でパリィされた。
単純な剣の腕前では、大きな遅れはとっていないがノゾムの勝ち筋も見えない。
ダンカンは、低く詠唱し、両手の剣と角に雷をまとわせた。
攻撃を受けての追加ダメージはもとより、パリィされても電撃が来る。
ノゾムは、聖剣に炎をまとわせ、さらに魔力を込める。炎は白炎を通り過ぎ、青白く輝く。
ノゾムの無造作な初手は、ダンカンの剣に難なくパリィされるが、その電撃は聖剣の青い炎を散らして終る。
ダンカンの電撃は、ノゾムの剣の青いプラズマとともに、
「操れる電撃同士なら、こうなるみたいだね。これも手詰まりかな」
返答もせず、ダンカンの角と剣から複数の雷が奔る。
そのいずれもが、ノゾムの剣に、
全ての雷を目眩ましに、ダンカンの跳躍と角と剣が来る。
ノゾムは、盾で角を受け、剣を剣でパリィするが、その勢いに押され、
後退はしたが、無傷だ。ノゾムはダンカンと再び対峙する。
「仕切り直しかな」
「いや、私の負けを認める」
意外な宣言が、ダンカンの口から出る。
本来ならまだ小手調べの段階で、負けを認めるのは早過ぎる。
「雷電魔法を剣の魔法と魔力のみで抑え込まれては、手数で優っても、実質打つ手が私には無い」
ダンカンは、そのまま剣を納め、ノゾムとライザームにそれぞれ一礼して、クルシアスの下に戻り、一礼して勝てなかったことを謝罪しているようだ。
「ダンカン殿は、お話した通り、雷電魔法の使い手で、両手利きの上に角まで操る剣の使い手。雷を封じられて、余程、奥の手は、ノゾム殿や我々に見せたくなかったのでしょうな」
ポーシュの推察に、ノゾムも、それならこの結果も仕方ないと頷く。
実戦でも無いのに、手の内は見せられない。自分の魔将級の試練であっても、勝ちに拘って、北東の砦の戦力として見切られしまっては、本末転倒というものだ。
次期
「これにて『
あっさりとクルシアスの配下は四連敗したかに見えたが、ライザームの判定は、魔将級の試練の全員合格を告げていた。水準以上の戦闘力・判断力を見せたと言うことなのだろう。
『四壁』の相手をしたノゾムを除く三人も、当然魔将級ということだ。
魔軍の人材の層が、思ったより随分と厚い。ノゾムは漠然とそう感じていた。
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