第22話 殺し合いにはなりません
ライザームの呼び出しに応えるように、
気迫は互角か、両者は、ライザームの言葉を落ち着いて待っていた。
ライザームからの縛り、条件無しが二戦続いたが、魔将の資格が掛かったこの四連戦には、何かの条件付けなり縛りが掛かる可能性は高いと思われた。
もし、何も無ければ、魔将候補級同士、ガチの腕力魔力なんでもありの力任せの殴り合いだ。
「殺すな。死なせ無ければ、ベリーヌ達、ガーディアンベリーの精達が癒やす。尚、魔力の使用は最大五割までとするが、魔術の使用そのものは制限しない。その力を見せよ」
ライザームは、ほぼ何でもアリを宣言する。ここまでの二戦と変わりないが、改めての宣言で生死の境を越えねば何でもアリと言われると、より危機感が近くなる。
ロヴが、両手持ちの両刃の大斧に大量の魔力を込め、後ろに構える。
ここから水平か袈裟懸けにフルスイングすれば、全てを両断しかねない魔力だ。
対してポーシュは、両手持ちの大剣をゆっくりと正眼に構え、どこから来ても受け流す気配を出している。
袈裟懸けにポーシュを襲ったロヴの最初の一撃は、必殺の一撃であった。
だが、それは軽やかに受け流されて空を裂き、大地を割って止まった。
ポーシュが、すかさずロヴの両刃の大斧を大剣で押さえ、土の精霊魔術を掛ける。
土が大斧を這い上がり、重量を倍以上に、大地を裂いた大斧は、大地にめり込んだ土の大槌に様相が変わり、ロヴの力をもってしても、容易には持ち上がらなくなる。
ポーシュの大剣は、そのまま大斧、いや、大槌の柄を滑って行き、虎獣人の喉笛を切り裂くかに見えたが、その寸前でピタリと止まった。
「参りました」ロヴが無念さの滲む声とともに、大斧の柄を手放す。
大斧の柄は、もはや土の大槌どころか土の柱から生えているかのように見え、微動だにしない。
「そこまで」
ライザームの声がかかり、ポーシュは剣を納めてロヴに一礼し、ロヴもポーシュに一礼を返す。
ポーシュは土の柱に生えた大斧の柄を無造作に掴むと、術を解き、土の柱は消え、大斧が現れる。
柄をロヴに向けて差し出す。
「一瞬のこととは言え、ポーシュに本気を出させたのは、見事であった」
ライザームの言葉に、ロヴ以上にポーシュが恐縮している。
「ロヴ、ポーシュ殿が本気で相手にして、無事だったのだから、誇ってよい」
クルシアスが、帰って来たロヴにわざわざ声を掛ける。
「私は、最初の魔将の試練で、あの土の柱に首と片腕以外は全て囚われた。ポーシュ殿の手加減もあったやも知れぬが、あれで十分だ。私も同じように、ライザーム様から、ポーシュ殿が本気で封じ込めねばならぬ敵と認めたから土の柱を使われたと、お褒めの言葉をもらったよ」
「私の慢心でした」
ポーシュが、淡々と述べる。
「ロヴ殿の思い切りの良さを見誤って、深傷を負うところでした。しかも、それにかっとして
「よい。クルシアスもここまで昇って来たのであるし、ロヴも上を目指す心まで折れてはおらぬ。むしろ、おぬしの意気消沈ぶりが面白い」
ライザームには、試練におまけがついたほどにしか見えていない。
「次、『
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