第2話「衝突」
時計「」カチッカチッ
俺「先生、そろそろ帰してくれませんかね。こうしている間にも授業にどんどん遅れていくんですよ」
先生「全く反省していないようだな君ぃ。自分が何をやったかわかっているのか? 何か釈明があるというのなら聞いてやるから話せ」
俺「黙秘します」
先生「!」プッチーンッ
先生「さっきからそればかり! 傷害で警察に突き出してやってもいいんだぞぉ!?」グイーッ
壁「」ドンッ
俺「うっ。く、苦しい……」
先生「どうだ!? これが大人の力だ! 3つ数える! 終えるまでに話さなければお前を殺す! ひとーつ!」
俺「……」
先生「ふたーつ!」
俺「……」
先生「……はぁ。なぁ、お前は一体なんなんだ。先生には何もわからない」
俺「……先生、男には意地でも話すわけにもいかないことがあるんですよ」
先生「余程の事情か?」
俺「俺にはあの時ああするしか他になかった。それは自信を持って言える」
先生(さしずめ、両親の仇といったところか……)
先生「次はないぞ」
俺「うす」
★
俺「ったく、結局1限目終わっちまったじゃねぇか。今日の現国は太宰治の羅生門だってんで気になってたんだけどな」ガラッ
友「あ、俺の奴戻ってきたぜ!」
幼馴染「お、おかえりなさい俺くん……。その、大変だったね……?」オドオド
俺「チッ。なんてことねぇよあれくらい。センコーの話の長さには参ったけどよ」
友「ところでさぁ! 説明してくれよさっきの! なんだったんだよあれ!」
俺「……なんとなくだ」
友「そんなので納得できるわけないじゃんかよ! 美少女転校生ボコボコにして脱糞させたんだぞお前!?」
幼馴染「と、友くん。あんまり追及しないほうが……」オドオド
友「許嫁ちゃんの気持ちになれよ! 新しい環境に身を移すことになって不安でいっぱいだろうにこんなことになっちまってさ! 彼女のあだ名はビッグバンで決まりだよ間違いない!」
俺「……」
★
幼馴染「あの、本当にそれくらいに……」オドオド
友「幼馴染ちゃんもいつまでこいつの肩持ってんの! これはなあなあで済ませていい問題じゃあないよ!」
幼馴染「お、俺くんは昔から怒ると黙りこくってもうすぐキレるアピールするから……。そろそろわかりやすく大声出すよ」オドオド
俺「……!」ブチィッ
俺「女が俺のこと知った風な口聞くんじゃねぇー!!!」ブンッ
拳「」ドゴォッ
幼馴染「おごぉっ!?」
鳩尾「」メリメリッ
幼馴染「げ、げほっ……げほっ……げぼぉーーーーっ!!!」ビシャビシャ
友「わ、わわっ! 大変だ! 幼馴染ちゃんが吐いちゃった! おい誰か、雑巾とバケツ持ってきて!」
俺「チッ。どいつもこいつもきったねぇなぁ……」ポリポリ
★
幼馴染「ゲロゲロォ!」
友「幼馴染ちゃんしっかりして! こうなったらもういっそのこと全部吐いちゃおう! その方が楽になれるから!」サスサスサス
教室の片隅「」ヒソヒソ
女「……ねぇ、俺君ヤバくない?」ヒソヒソ
JK「前々からちょっと片鱗はあったけどあれはヤバいよね。キレやすすぎ。幼馴染ちゃんもよく幼馴染続けてるよ」ヒソヒソ
美少女「ワイルドだねぇ」
女「許嫁ちゃん、怖くて戻ってこれないんじゃないかな……。また転校なんてことになったらあんまりだよ」ヒソヒソ
JK「そもそもなんで許嫁ちゃん襲われたんだろ?」ヒソヒソ
美少女「私が考えるに、許嫁ちゃんの言う"相手"っていうのが俺君なんじゃないかな?」
美少女「そして彼はそれをバラされたくなくて思わず手を出してしま……」
女「ねぇ! 人のヒソヒソ話に勝手に入ってこないでよ! 気持ち悪いの!」バンッ
美少女「えっ、あっ、ご、ごめん……」ビクッ
JK「美少女さんそういうところあるよ」
美少女「……」シュン
★
気持ちいい風「」ヒュウウウウッ
カーテン「」フワーッ
許嫁「ん……んん……」パチッ
許嫁「……ここは? 保健室?」ムクリ
幼馴染「あ、許嫁さん。よかった、目が覚めたんだ……」ホッ
許嫁「あなたは?」
幼馴染「私は幼馴染。許嫁さんと同じクラスなんだ。さっきはその……うん、言葉にできない」
許嫁「ああ、通りで何処かで見た顔だったと思ったわ。具合が悪いのかしら、ベッドで横になって……」
幼馴染「私は平気なんだけどね、皆が休んだほうがいいっていうから。いつもの事なのにね。ふふっ」
許嫁「よく見たら右頬が腫れているわね。サウスポーにでも殴られたの?」
幼馴染「うん、ちょっとね」
許嫁「そしてあなた、なんだか臭い」
幼馴染「そんなことより、許嫁さん。私、気になることがあるの」
許嫁「血液型はA型で好きな食べ物は枝豆。転校初日に訊かれる質問の答えは大体これでカバーできるわ」
幼馴染「ううん。私が訊きたいのは俺くんとのこと」
★
許嫁「俺君? どなたかしら?」
幼馴染「さっき許嫁さんをボコボコに殴った挙句絞め落とした人だよ。男なんだから女に勝って当然なんだけど、クラスの皆に俺の強さを見せられて気持ちよくなってそうな」
許嫁「ああ、あの好戦的な。彼、俺君っていうのね。切れ長の目が印象的だったわ」
幼馴染「俺くんってね、実は私の幼馴染なんだ。最近は家にも上げてくれないんだけど、昔はそれなりに仲が良かったのかな。私は思ってるだけかもしれないけど」
許嫁「へぇ」
幼馴染「それでね、ちょっと変なこと訊くかもしれないけど……2人はもしかして知り合いだったりするの?」
許嫁「私は転校生よ。接点なんてあるはずないわ」
幼馴染「でも、いくら俺くんでも初対面の人には殴りかからないと思うの」
許嫁「それは本人に訊いてみたほうがいいんじゃないかしら。被害者よ私は」
幼馴染「で、でも、俺くん、あんまり私の話に耳を傾けてくれないから……」
許嫁「それは彼との信頼関係が築けていないということでしょう? もう少し彼の性格に合わせてあげる努力なんかが必要なんじゃあないかしら?」
幼馴染「……ごめんね変なこと訊いて。私の思い違いだったみたい」
許嫁「わかってくれたのならいいわ」
幼馴染「でも、許嫁さんって進んでるんだね……」
許嫁「どうして?」
幼馴染「だ、だって、自己紹介の時、すごくエッチなこと言ってたから。お口でとか……。私はまだ彼氏とか全然そういうのわかんないもん」カアアッ
許嫁「ああ、あれのこと。まあ、そういうことは俺君の許嫁である以上付いて回ることだと思うわ。若い男女の番なんてそんなものよ」
幼馴染「えっ」
【SS】俺「俺達の関係、絶対バラすんじゃねーぞ」 許嫁「わかったわ」 文月 景冬 @Fuzukie
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