この物語のヒロイン、幼少の頃から、ひとり寝だったようだ。
両親は、朝早くから夜遅くまで仕事をしていた。それを尊敬していたからこそ、寂しさにも耐えていたのだろう。
古時計の刻む音を気にして眠れない夜も、両親に教わった、羊を数え、そのうちに眠りにつく日々だった。
この夜も……。そして、不思議な体験をする。
時は流れ、現代、この厳しいご時世の中、先代から受け継いできた宝石店をたたまなければならない状況になる。
ここまでの様々な感情が募り、今でも、正確に時間を刻み続ける古時計に想いを馳せた。
そこで、零した涙が、また……。
弱気なこころを暖めるかのような、背中をそっと押してくれたような、素敵な時間の流れが、この物語にはある。
そして、不思議な古時計は、いつでも、それを見護っているようだ。