第2話:愛欲王

 オスカルとフェルディナンドの不幸は、主君であるカルロス・マリーア・ディ・アブスブルゴが恐ろしく女好きだった事だ。

 カルロスは十三歳で最初の庶子を生ませて以来、認知しているだけで百を越える子供がいて、表向きその全てに結婚相手を探し領地を分与しなければいけなかった。

 現実にはそれは不可能なのが、それでも体裁は整えなければいけない。


 いくつかの方法があったが、その一つが教会に送るというものだった。

 教会には独自の領地があり、教会で修業する修道士と修道女がいる。

 教会の収入で王子王女を養い、修道士と修道女に身の回りの世話をさせる。

 下手に軍人にして才能が証明されては、王位継承争いでもめることになるから、教会に入れるのが一番無難だった。


 だが教会もそう多くの王子王女を受け入れられるわけではないので、優先的に送られれるのは王子という事になる。

 それに王女を送る教会は、女子修道院となるのだが、女子修道院の数は男子修道院の一割にも満たない、百の男子修道院に対して二、三の女子修道院しかない。

 全ての王女を修道院に送れないないが、分与する領地もないとなれば、王家に残して飼い殺しにするしかないのだが、母方が大貴族であったりすると、あまり酷い扱いもできなくなってくる。


 結果としてカルロス王の側近は、王女の嫁入り先を探して頭を悩ます事になる。

 外国の場合は人質に取られないくらいの友好国だが、外国の場合だと化粧領を分与しなければいけないので、今回は国内に限られてしまう

 国内でも、王女が降嫁しても王家の面目を保てる家柄の貴族であること。

 化粧領を何の価値もない荒地や未開地にしても大丈夫な経済力があるか、隣国との紛争地にしても大丈夫な武力があること。

 更に加えるなら年齢差が余りに大きくない事。


 そんな都合のいい貴族がそれほど数多くいるわけではないのだが、その限られた相手として、オスカルとフェルディナンドが選ばれてしまった。


 オスカルは公爵家の嫡男だから家柄に全く問題がないし、スコーネ公爵家は元々豊かな領地を持っていたが、オスカルが改革してからはさらに豊かになっている。

 武勇にかんしても十三歳から戦い続けて名将の誉れ高いので、王女が降嫁しても全く問題がなかった。


 フェルディナンドにかんしては、カンダカン辺境伯家は家柄的にはギリギリなのだが、開拓の余地のある広大な未開地を抱えており、フェルディナンドが開拓の指揮を執ってからは農地が飛躍的に増えていた。

 武勇にかんしてもオスカルどうよう十三歳から戦い続けて名将の誉れ高いので、王女が降嫁しても全く問題がなかった。


 だが二人にとっては、王女を正室に押し付けられるのは大問題だった。

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