まさかのオチ、でもないけれど

「欠点と短所の違いって、分かる?」男が女に言った。

「どうしたのよ、急に」女が答える。

「特に。面接とかなんかで自分の短所をよく聞かれたりするから、そういえば欠点と何が違うのか気になっただけよ」

「画数とか、まさかそんなオチ?」

「まさかまさか」おどけて男が言った。

「うーん、なんだろう。欠点は本来的なデメリットでしかないけど、短所は長所との表裏一体? みたいな……?」と女は考え込んでから発言した。

「表裏一体って?」

「いいようによっては短所は長所ってこと。例えば、完璧主義って、悪く言えば要領が悪いし、よく言えば几帳面、みたいな」女はそう言った。

「なるほど、でももっと簡単な違いがあるよ、それは文字をよく見ればわかる」

「画数?」男を睨んで言った。

「違うって」再びおどける男。

「分からないわ」女は少しだけ考えたが、諦めて言った。

「欠点は点、短所は所。つまり指しているのが点なのか空間なのか、ってこと」男はボールペンで紙に直線と立方体を雑に描きながら言う。

「所で、なんで空間?」と女が尋ねた。

「別に何も話題をすり替えているわけではないけれど?」

「by the wayの『ところで』じゃなく、所という字でなぜ空間なのか、よ」

「所って、場所じゃないか。場所はだいたい空間だろう」

「なるほどねぇ、よく考えたものだわ」

「よく考えたさ。じゃあ欠点と弱点の違いは?」と男が聞いた。

「さぁ」女は肩を竦めるジェスチャをした。

「文字をよく見ればわかる」

「どっちも点じゃないの。一次元と一次元よ」

「画数が違う」

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【短短編集】狂言、迷言、たまに戯言。 西辻 東 @128nishinosono

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