04-008.姫騎士と競技。 Prinzessin Ritter und "Chevalerie".
2156年9月26日 日曜日 14時過ぎ
学園敷地内、北側にある正門から学園校舎の丁度中間辺りにコミュニティセンターが建設されている。このコミュニティセンターは、ローゼンハイム郡の住人ならば予約すれば何時でも利用出来る施設だ。注意点は、完全予約制であること、利用目的によっては許可が下りないことだろうか。当然、不利益を生むような団体からの予約はキャンセルされる。
コミュニティセンターの多目的小ルームは、四十平米(約二十四畳)ほどの小空間である。よく画廊になったり、小規模なイベントに用いられたりするが、今回は会議卓と移動型モニタ――ホワイトボード兼スクリーン――を合わせて借り入れている。よくある会議室の雰囲気そのものだ。卓上に用意されたお茶は、
「みなさん、お集りいただきありがとうございます。チーム全員での初顔合わせとなりましたが、本日は学内大会での大まかな方針と戦術についてお話させていただきます」
参集した
本来、
「いやー、本気度が凄い的。集まった面子がおねーさんの想像を超えてたー」
「何を仰いますか、ウルスラ。これは個人競技じゃありませんですから。
「ああ、だからこのメンツなの。戦術で入れ替えれば全マップに対応出来そうなの」
顎に人差し指を当て小首を傾げた彼女の名は、リゼット・ルイゾン・シドニー・エルメス。フランスから来た
そう。リゼットを例に取り上げたが、ティナが集めた人員が普通である筈もない。
アクロバティックな身体操作を
ロングソードをサーブル運用するリゼット・ルイゾン・シドニー・エルメス。
面子を集めたティナ自身も、複数の武術をひょいひょい切り替える予測不能なスタイルだ。
そして、残りの面子。
隠形と気配察知、死角からの攻撃を得意とする
騎馬の最大戦速で疾駆しながら動目標に弓を射るアナンディーン・ニルツェツェグ。
弦のテンションが強く中距離のレンジをカバーする短弓と、
幾何学的歩法と点の攻撃、そして闘牛士の技を併せ持つマグダレナ・ペレス・サバレタ。
インドの達人
カレンベルク家の分家であり、千五百年の歴史を持つ一族の武術と兵法を継いでいるクラウディア・フリーダ・カレンベルク。
エデルトルート率いる
皆が一様に一癖も二癖もある面子だ。
よくもまぁこれだけの人材を集めたと、呆れられる程には有名どころが揃った集団となっている。
何せ、冬に控えた
普通に勧誘した程度では、専門外の競技である
――
――そして、全試合を完膚なきまでに蹂躙してみませんか?
ティナが勧誘で用いた言葉。甚だ問題を含んだ誘い文句であるが、
「皆さんには最初にお誘いした通り、一段階レベルが上の
淡々と決定事項であるかの如く、ティナは言葉を続ける。
「現時点で出場人数は我々含めて四十一名、あと二名出場表明があれば五チーム編成になるでしょう。つまり五試合は確定ですね」
試合の組み合わせや人数調整などは、学園生達が組織する
そして、
「マップが三種類なのは変更ないわよね? レイアウト変更でやり繰りする何時ものパターンだとして、ティナはカレンベルクの戦術を持って来るつもり?」
「いえいえ、ガッツリな戦略をみなさんに覚えて貰うには、さすがに時間が足りませんて。簡易になりますが、短期間で連携が修得出来る戦術を用意しました。それよりクラウ、その座り方は如何かと思うのですが……」
ティナの
「気にしない、気にしない。どうせ女子しかいないんだから気楽にいきましょ」
以前、ティナの
「
気配無く、縁側の老人のように
それを後押しするようにお茶請けの
「四色の具が乗ってる四角いのは、焼売とか言うヤツだワね。キレイな彩りしてルね。ふむ、食感は皮の薄いサモサを蒸したカンジかしラね?」
彼女は、語尾が後半になればなるほどイントネーションが変わってしまう特徴ある喋り方をする。母国語がヒンドゥスターニー方言のヒンドゥー語と英語なのだが、ドイツ語の発音は慣れ切っていないらしく、表現が少し間延びしてしまう。インドでは方言が多種多用で、三十に及ぶ主要言語、約二千の方言が存在する。そのため、通常は英語を使い意思疎通をすることが多い国民だ。
「これ、
「肉なら塊で欲しいカナ。あ、コレはミンチ先生が入ってるネ」
ニルツェツェグとララ・リーリーも点心に興味深々である。ララ・リーリーが言うミンチ先生とは挽肉のことだ。彼女は、様々な料理に幅広く使える挽肉に敬意を払って先生付けで呼んでいる。
「エストックに指環を付けてるのは初めて見たの。興味深いわ、興味深いのよ」
「わたし専用のカスタムなの。
マグダネラとリゼットはエストック談議に花を咲かせている。闘牛では基本的に片手剣のエストックが使用されるので、マグダネラにも馴染みがある武器だから話が合うのだろう。
「だからテレージアは夏季休暇中に彼氏の実家でお世話になってたのか。いきなり実家にお邪魔するなんて随分と思い切りがいいのね」
「ななな、なにを仰るのかしら⁉ エルフリーデさん! ど、どこからそのお話を伺ったのかしら! わたくしが
エルフリーデからツッコミまれるテレージア。日本のイベントに参加した動画は公開されているので、夏は日本に居たことがバレバレである。そこに写るテレージアと
「開始早々カオスな件について」
「あははは、うけるー。みんな好き勝手やってる的ー」
「
クラウディアの言葉に、やれやれと肩をすぼめるティナ。
どの道、初日の顔合わせなので、襟元正しくする必要もない。この場は、
彼女達は、背中を任せられる相手であるか、コミュニケーションと言う手段を持って探る。相手を観察することは、
だからこそ、ティナも全員の音頭を取って無理に話を進めることはしない。必要な脱線だと捉えているからだ。
そうこうする内に、集まった面子は気の赴くままに話し相手が変わっていく。技術的な話は殆ど出ず、その個人に対して気になるところなど、特に面白おかしかった話題などがピックアップされたりしている。素の部分を刺激して、相手の反応を引き出し、本質を見極める。
――和気藹々としながら、
ティナが参集したのは、必要なことを得るために自ら動き、それを糧とすることが出来る人物達だ。名を馳せて一流と呼ばれるだけの理由を持っている者達である。
結局、皆が落ち着くまでは、たっぷり三十分程かかった。
「はーい! みなさん注目ー」
パンパンと手で拍子を打ち、弛緩した空気を引き締めるティナ。この場に居る者の視線が集まる。
「十分にコミュニケーションは取れたようですし、お互いの理解が深まったのではないでしょうか。それを踏まえて本日の主題である、戦術の方針についてお話させていただきます」
言葉を紡いだティナは、
「まず競技マップですが、例年通り三種類を遣り繰りすると通達がありました。最初に言った通り五試合の前提では、レイアウト変更によるマップの重複が二つ出ることになります」
指を折りながら数を表すティナ。
「ですので、どのマップが重複しても良いようにマップ三つに対して戦術を二つずつ用意しました。全て用兵と立ち回りが異なるように組んでいます」
ここで、戦術を六つではなく、三つを二通りと
その業務的戦術を会話に織り交ぜるティナは契約ごとやプロモーションで培った、場の操作をしているのである。
「三つのマップに、それぞれ二つの戦術、ね。五試合全て違う戦術を使う認識で良いかしら? 各戦術の粒度を知りたいわね」
戦術の話から始めたので、集団戦のエキスパートであるエルフリーデが真っ先に喰い付いてきた。続いて、家伝で戦術を練っているクラウディアが言葉を付けたす。
「それと、参加者が特殊な技量持ちばっかりよね。これでどう人員の割り振りをするのかも気になるところじゃない?」
「それ気になる的ー。弓が三張りあるからどー使うのか、おねーさんだとちょっとわかんない分野かなー」
「私も作戦とかを貰って実行する係だから良く判らないしー」
「一対多の技法は練ってるけド、多対多は鍛錬にも含まれてナイからどう動くのか今一つ理解が追い付いテないカな?」
「まぁまぁ、皆さん。まずは殿下のお話を最後まで伺ってから論議を始めた方が宜しゅうございますわよ」
話が発散しそうになりかけたタイミングでテレージアがすかさず方向修正を行った。ここ暫く、
「はい。再びマイクが戻ってきましたので、ザックリ説明に移らさせていただきます」
実際ティナがマイクを使ってる訳ではないが、発言権を主張するための方便である。
「今回、全体の一貫した戦略としては、相手に何もさせずに抑え込むことをメインのテーマに据えています」
「それを実現するために、各マップで優位性の有る戦術を二つずつ用意し、全ての試合で異なる戦術を展開します」
ここまで聞いて、口を開きそうであったリゼットは、思いとどまるのを良しとしたようだ。一度顔を上げて乗り出そうとした挙動から、椅子に深く座り直したのだから。
そう言った行動を誰かがするであろうことも想定済と、姫騎士さんは目線をチラリと向けただけで言葉を続ける。
「試合までは二週間しかありません。急造チームでもありますから、期間内に出来ることは限られます」
ここで、再びティナは溜めを入れる。そして
「ですので、大会までの準備としては三つの項目に重点を置きます」
この場に設置されているホワイトボード兼スクリーンに三つの項目が映像表示される。
ティナは
「一つ目。戦術パターンの陣形と行動指針を大枠だけ覚えてください」
戦術一つ一つについて、浅い部分を主に用いて深い部分は切り捨てると暗に言っていることは、この場に集まった者もなるほど、と理解した。
「二つ目。移動とタイミングをメインとした連携の摺り合わせです」
次の項目に差し棒のレーザーで下線を何本も引いて印象付けながら、横目で周りを見回すティナ。先の言葉による皆の反応を確かめているのだ。耳にした言葉を咀嚼する者、静かに頷く者、視線を外さずに注視する者に分かれた。
「三つ目。戦術ごとのキーポイントを用意します。陣形が崩れても、それに準じた立ち回りで補います」
差し棒で項目の周りをグルグル光の線を引きながら、三本目の指を立てて言い切る。それは確固たる意志をもってこの三つを必要であると断言するためだ。三番目に持ってきたと言うことは、単純に項目を列挙した訳ではないことは、聴衆となった
「では、それぞれの題目について、説明しながら質疑応答と行きましょうか」
気になるところを質問していただき、それぞれが意見を出し合った方が教わるだけでは得られない理解力が増しましますから。などと姫騎士さんは申しているので、用意した戦術の内容を膨らませる気満々なのだろう。むしろ、この戦術を実際に運用する
一つ息を吐いて言葉を続けるティナ。
「まずは、戦術パターンについてです。先程の通り、三つのマップに対応する戦術を二通りずつ用意しています。内訳的には、電撃、奇襲、遅滞、誘致、挟撃、偽装、集中の六種類で、全て陣形が異なる造りとなっています」
「はい! 質問なの!」
リゼットが軍人
「何でしょう、リゼット」
リゼットは人差し指を顎に当て、小首を傾げながら口を開く。それは質問と言うより所感であった。
「その六つは、それだけの運用で完結してるとは思えないの。戦況に合わせて流動的な切り替えや組み合わせをする前提ならシックリくるの」
「あら、察しが良いですね。
「えーと、はい! 疑問点を上げてもヨいかしラ?」
「はい。構いませんよ、ヴリティカ。意識の摺り合わせも兼ねてますんで、些細な事でもどんどん意見を出してくださった方が助かります」
肩の高さで挙手をするヴリティカ。休日と言うことで私服だが、紺と黄緑のツートンカラーをベースとしたシルクのサリー姿だ。紺色部分には草花を中心に宗教的幾何学模様が刺繍されており、見た目的にも豪奢でかなり華がある。下に着込む半袖の上衣であるチョリは濃い黄色をしており、サリーの色合いにアクセントを添えている。
「その切り替える、と言うノは? 試合マップのパターンに紐ツいた戦術なら、選択範囲が狭まルんではないかしラ」
「いえ。確かにマップへ合わせた戦術を用意しましたが、あくまでマップにテーマを決めて戦術を当て嵌めただけです。実際はどの戦術で戦っても問題なく運用可能です」
リゼットとヴリティカは、貰った回答に何となく厄介な含みがあると感じて思わず片眉が釣り上がる思いを隠すことなく顔に出している。
この二人だけではない。クラウディア、エルフリーデ、それとララ・リーリーも何とも言えない顔をしている。
ティナが質問に答えたと言うには、読み取れる内容が集団戦に造詣が深い者にとって非常に面倒くさい意味合いが含んでいることを察してしまったからだ。各戦術の粒度云々どころか、複雑に絡み合う予感を。
特に、カレンベルクの兵法である部隊指揮教養を叩きこまれているクラウディア、戦略と戦術を用いる集団戦が主戦場のエルフリーデ、狩猟解禁期間には部族の戦士たちと集団で連携しながら狩りをするララ・リーリーの三人が渋い顔をしている。
「あら、何に思い至ったか判りませんが、そんなゲンナリすることないじゃありませんか」
姫騎士さんは、シレッと
「六パターンを常に切り替えて予測不能にすると見た」
「確かに妥当ですわね。絶えず変化する戦術でしたら、終わった試合を参考にされることも防げますわ」
テレージアが
この二人、
しかし先の三人、クライディア、エルフリーデ、ララ・リーリーは、八名と言う一小隊に等しい少数チームで、試合時間四十五分の局地的な戦いにそこまでするのか、と言う思いの方が先に立つ。相手となるチームは基本的にコンピューターでランダム編成される即興チームだ。こちらが戦術を一つでも用意して連携を事前に固めて置けば、それだけでも相当有利に戦局の主導を握ることが出来るのだ。なのに
少なくともティナの戦術運用は、大規模戦を考慮しているのではないかと訝しむレベルである。項目の記載にある大枠と違う方向ではないか、と。
「わたしは、ターゲット指定された獲物を射るシゴトだったから、ふんわりとしか判らないしー」
「切り替える前提だから移動とタイミングの連携なのかしら。連携なのよ」
部隊としての戦術に
「それでは二つ目行ってみましょう! 一つ目を運用するための必須事項ですから!」
気を取り直して、ではなく、妙に張り切っている雰囲気で語り出すティナ。先に回答した内容の裏を読んだ面々へ、察したことが正解であると答えるように。そして、意気揚々とホワイトボードスクリーンの二項目目を差し棒の描画モードで花丸のように囲っている。
「移動とタイミングの連携ですが、戦術切り替えの挙動もこれに含みます」
ああ、やっぱりか、と三名程が半分諦め顔である。
ティナの言葉前半部分。騎士科に属するならば戦術理論や戦術基本の履修をしているため、行軍や展開、仕掛けどころや引き際などを円滑に運用することだろうと大体の予測は出来る。だが、後半部分が入って来ると話が複雑になる。戦況に合わせた局地的部隊運用を匂わせているのだ。ケースに合わせて個々の技量で適宜対応する――などではなく、イレギュラーケースも踏まえて戦局全てをデザインしようとする試みが伺えてしまったからこそ、渋い顔をしてしまうのだ。
その思いが口からこぼれるクラウディア。親戚だからこそティナのことを良く判っている一言だ。
「ティナって普段は面倒なことは回避しまくるのに、自分から動く時はやたら難易度の高い面倒事に周りを巻き込むのよねー。笑顔で能動的に」
「ちょっと、クラウ! 言い方! 風評被害です!」
「小等部時代の弾丸ツアーとか、巻き込まれた
「……」
姫騎士さん、押し黙ったところを見ると、自覚はあったようだ。
ちなみに弾丸ツアーは、若年層の
「はい、それでは説明しますね」
何事もなかったかのように笑顔で話を再開する姫騎士さん。瞬間的に自分のことを棚に置く精神力の強さは瞠目に値するだろう。面の皮が厚いとも言うが。
結局のところ、集団戦経験組の予想通り戦局をデザインするための戦術であった。
六つの戦術には
更にはチームを二~四部隊に分けて運用する前提となっており、どの試合でも部隊指揮が出来るティナ、クラウディア、エルフリーデの三人中、必ず二人はメンバーに含め、指揮官の役割を果たすのだ。それを聞かされたクラウディアとエルフリーデは貧乏くじを引かされた感が否めないようで、ムッツリしていたが。
そして、三つ目の項目で挙げられていたキーポイント。これはマップと用いる戦術に対するテーマ的意味合いであった。例えば、弓兵が健在であるか、損耗が予定内であるか、対戦相手が策略通りの挙動であるかなど、進軍速度や戦術変更に対する判断材料であったり、接敵時の対応など、複数の意味を持たせていた。一意の方針ではないため、猶更に戦術を読み難くしている。
各戦術と部隊の動きなどはプレゼンよろしく綿密な資料が造られており、ホワイトボードのスクリーン機能が大活躍であった。プレゼン資料は当然の如く、各人に配布している。
二時間に及んだ説明会と言う名の打ち合わせで、様々な意見が飛び交った。特に司令塔役を振られているクラウディアとエルフリーデは、各部隊が分散した際の連絡方法や、戦術切り替え時の同期方法など、摺り合わせに大きく時間を取られた。何せ、伝令を出せるほど人的リソースがないからだ。
弓部隊も狙撃する距離を気にしていた。彼女達は距離に応じて弦のテンションを変える、もしくは対応する弓に変える必要があるからだ。ウルスラが
話し合いで最初に確定したことは、練習についてであった。一項目から三項目までを加味しながら聞けば、戦術は高度で複雑なのだが、それは組み合わせたことによる見え方であって、紐解いて見ればティナが最初に言った通り一つ一つはかなり簡易化されていた。
兎も角、平日夕方の一時間ほど全員で集まり、戦術に含まれる陣形のお
試合まで後二週間。一見、練習量が不足しそうに思えるが、全く問題ないだろうとティナは確信している。
そもそも集めた人材が世界で戦えるレベルにあり、個々の技量はトップクラスで手を入れる必要もない。弓部隊にしても同様だ。
予定通り仕上がれば、総合戦力が尋常じゃないチームが産まれることだろう。なればこそ、姫騎士さんから笑いが漏れてしまったとしても仕方がない。
「フッフフフフフフフ」
「(紛うことなきチート軍団が爆誕します。
今日のティナは、珍しく心の声と乖離が見られない。どちらも黒い。怪しげなオーラが立ちのぼりそうだ。
その様子に違和感でも覚えたのだろう。テレージアがティナを気遣ってきた。
「殿下、如何なさいました? お加減を崩されましたでしょうか?」
「いえいえ、ナニも問題ありませんよ? このチームが実働する姿が楽しみで、思わず含み笑いがこぼれてしまっただけですから」
「そうでございましたか。それならば宜しゅうございました……」
テレージアの言葉に歯切れがないのは、やはりティナの違和感が拭いきれないからだろう。
「ところで。森林マップの戦術、行軍範囲に地上以外が含まれてるのが正気を疑うわ」
「そう、それー。ティナの発想が斜め上すぎてうける的ー」
「エルフリーデにウルスラもなにを仰いますか。せっかく公園エリアの森林地区がマップになるんですから自然物を有効活用するのは当然です」
呆れ顔のエルフリーデ、大笑いするウルスラを尻目にシレッと返すティナ。
木々の合間を立体機動するつもりなのだろう。
しかし。
一時期、コッソリ鍛錬中の姿を見られ、公園エリアにUMAが棲みついた噂が
そして試合後、森林マップで大暴れした姫騎士さんは後悔するだろう。
UMAの正体見たり、と口々に囁かれることによって。
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