01-006.春季学内大会第一部、開催です
2156年3月9日 月曜日
3月の第一日曜日の翌日から5日間、春季学内大会第一部が実施される。
競技種目としては、
学園内の諸行事は、予算や日程を含めた責任を伴う最終決定は学園側が受け持つが、実習の一環として運営を学園生に委ねられている。
学園には以下の学科があり、それぞれのスペシャリストを育成している。
・騎士科
・人間工学科
・スポーツ科学科
・電子工学科
・運営科
イベントの段取りと取り纏めは基本的に生徒会が受け持つが、実働部隊は各学科の委員会が主導となる。今回は
今は開会式が終わり、本日最初の競技である
三人は空いた席を見つけて一息つく。そもそも、学園内大会にはTV局も入り、学内放送もあるので、学内のあちこちにあるスクリーンから生放送で観戦が出来る。更に簡易VRデバイスとモニタがあれば、どこでも個人的に生放送を観戦できる。わざわざ試合会場に赴かなくても良いのだが、騎馬を用いた試合となると迫力も臨場感も違うため、現地で見たくなるのだ。
「お馬さん、やって来たヨ。」
武器デバイスはまだ展開されていないが、彼らの武器は4m程の突撃槍。
行進の最後、葦毛の馬に跨った、威風堂々とした
「ああ、【騎士王】はこちらに出ていたんだな。」
上級生組の5年生で、名前がアーサー王に近く血筋のことを含め、いつしか「騎士王」と呼ばれていた。普段は、
余談だが、
「めずらしいですね。あの人、
「あれじゃないか? TV局主催の騎馬を使った
「
「確か、UKのどこぞの局だったと思う。優勝賞金100万ポンド(約1億5千万円)が設定されてた。」
「あら、随分と賞金額が大きいですね。
「うらやましいヨ。ワタシ賞金で
わざわざ賞金で買う程ではない。
午前中一杯を使った
突撃槍で巻き上げからの突きや、落馬扱いの強攻撃による1本勝ちなど、見どころは多く、観客も満足のいく試合が続き大喜びだ。
「さて、私はこれから
学内大会中、騎士科の仕事は意外と多い。会場設営や試合コートの調整、消耗品などの備品確認や準備、学園生主体の外部向け放送動画への技術コメント、露天などの出展や手伝い、一般客の対応等、雑務が色々ある。それをローテーションで回している。
「ワタシ、中華屋台の店主ヨ! 呼び込みで演武ヤルヨ! 着替えなきゃヨ!」
「私は、午後からアバターショップの売り子です。アバターデータが更新されましたので。」
アバターデータとは、騎士育成学園が公式リリースした3D格闘ゲームと3Dビューワーによる
ティナのアバターはエスターライヒ全国大会の試合データが追加されたもの。もちろん、ピンクのティーバックとクルリと回ってスカートを翻すモーションも追加されている。更にデータを作る電子工学科の面々は、学園、および
一般公開の際、アバターデータは店頭販売をする。そのため、ティナは更新したアバターデータの販促で今日明日は売り子となる。店頭販売特典としてブロマイドと
そうして、2日間を売り子として精を出すティナだった。
この2日間で、
問題は、
ティナは、忙しいながらものんびり気分で売り子をこなしながら、合間合間に近くのスクリーンでチラチラ試合観戦をしていた。が、この試合の実況で言葉を失った。
のんびり気分が一気に吹き飛ぶ。冷汗が流れる。ヘリヤの本質に恐怖した。蹂躙劇など霞んで見える程に。
なんだ、あれは
なんだ、あの速さは
なんだ、あの練度は
なんだ、あの強さは
ヘリヤは、確かな技であらゆる対応が出来る、基本に忠実な正統派スタイルの
しかし、この試合は、1対7の絶対的不利なもの。彼女の公式記録からもこのような状況は存在しない全く未知の試合。彼女の全力が見れるだろうと期待される。試合が始まる。全周を敵に囲まれ間断なく攻め込まれる。彼女に剣が触れることはない。避け、剣をいなし返り討つ。三人同時攻撃を受けた時は異常な速度で対応する。人間の出せる速度なのか。30分枠の試合が正味1分弱。正攻法で全てを捻じ伏せ蹂躙した。
そう、達人と言っても差し支えない程、異常な練度の基本技で。
どのような時でも小手先の技も策略も必要なく、また、効かない。
一つを突き詰めた頂点、その先の究極。
それが彼女の本質。
彼女はカメラに向かい、一言だけ言葉を放つ。
「あたしは見せた。だからお前も見せてくれ――ティナ。」
身が凍るラブコール。いつの間にか
色々な思いが去来し、ティナの顔色は青を通り越して白くなる。買い物客が肩を慰める様にポンポン叩いた。憐憫の目は「骨は拾ってやる」と語っている。
生贄に捧げられたが如く陰鬱な気分で
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