パンティと彼女と部屋の鍵

あさねこ

パンティと彼女と部屋の鍵

 かなりマズいことになった。

 12月24日の深夜だった。私はマンションの自室の前の通路に、パンティ一丁で立っていた。

 男性だったら、パンツを履けば少なくとも一番大事なところは隠れるだろう。しかし、私は女だ。女はおっぱいを、乳首を隠さなければいけない。ブラジャーが必要なのだ。ところが、私はそんなもの身に着けていない。

 寒いし、恥ずかしいし、見つかったらヤバい。誤解のなきよう弁解させてもらうが、私は望んでこんなことをするような露出狂ではない。であるならば、なぜこんなことになっているのか。それは、私の彼女のせいだ。彼女が、私を外に締め出したのだ。鍵をかけて。

 そもそも、この彼女との同居部屋は私の名義で借りているわけだし、家賃も私が払っている。でも、こんな状況である。大きく出られない。両手で、同年代の平均より小さい胸を隠しながら、インターホンに小声で話しかける。

「ごめん、無理にセックス迫ったのは謝るから、だから、頼むから部屋に入れてくれる?寒いし、見つかったらヤバいじゃん!頼むから。」

 答えはない。ドアは相変わらず閉まったままだ。

「入れてくれなくてもいいから、とりあえず服だけでいいから渡してよ!頼むから。ブラだけでもいいからさ……。」

 ガチャ、という音がした。ドアが一瞬半開き、隙間から何かが投げられる。慌ててそれをキャッチする。すぐにドアは閉まり、再び鍵がかけられる。

「これって……。」

 それは、私が愛用しているバイブレーターだった。

「ちょ、何のつもり?」

 ドアの向こうの彼女が嘲るような口調で言う。

「そこで勝手にオナニーしてろ!」

「いや、冗談じゃないから!マジで見つかったらヤバいって、通報されちゃうって!」

 少しの沈黙の後、彼女は言った。

「部屋に入れてほしい?」

「お願いします、風邪ひいちゃう。」

「じゃあ、これから私の言うこと聞くって約束して。」

「……はい。」

 ドアが開いた。彼女はしたり顔で笑っていた。

 聖夜はこれからだった。

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