第一話3 交渉
フィルザから渡された紙には火・水・風・土の全ての項目において、エラート記されていた。
アダプトンは勿論それに対し疑問符を浮かべ唖然とする。
「これは笑ってられないねぇ。修理費用が。あの人形は魔法防護の魔法式が刻まれてるから、かなりの額になりそうだ。困った、よね?」
かなりふざけた茶番だった。
「なるほど。何かしらの要求を飲めば、金を払わなくて済むと」
「話の分かる子は好みだよ?」
「戯言をぬかさないでくださいよ」
そして実践テストを終えたクラスZは、個人の魔法の腕を磨くために訓練をしていた。
その中、アダプトンだけはフィルザの傍らに腰を下ろしていた。
「まぁ、正直なところお金には興味ない」
「え、じゃあ―――――」
「ただ、魔法の事に関いては興味がある。賠償金免除を餌に聞くのも良いかなってさ。君のその力に興味がある。放課後僕の研究所に来てくれるかな?」
フィルザの要求はアダプトンの先の魔法の事についての情報提供だった。
「放課後は無理です」
「っ、どうしてだい?」
「エルモット校長に会いに行きますので」
今朝の事、エルモットにアダプトンは放課後校長室まで伺うと約束を交わしていた。
その答えに対しフィルザは深刻な顔をする。それは、情報提供を拒否される心配故ではない。
「エルモット校長とはあまり関わらない方が良い。無名で聞いたことすらないのに、伯爵の地位を手に入れていたのだから裏で何かがあるはずだ。あくまで推測だけど」
なんと、フィルザはエルモットについて何か感付き始めたようだった。
だがその忠告は空しく、アダプトンは断固としていく意思を見せたのだ。
「行かなきゃ行かないんです」
「分かった。用が無い時にでも訪れてくれ。出来るだけ早くだと助かるな」
「何故です?」
「それはぁ」
フィルザは目を泳がせながら頬をかく。その後溜息をつき口を開いた。
「僕ね。実は国お抱えの魔法研究者なんだよね。研究結果を国に来週には提出しなきゃだし、研究費用も貰っちゃってるから先延ばしも拒否も出来ないし、ね?」
フィルザは苦笑して見せた。また、アダプトンも苦笑する。
「まぁ、そう言う訳だから、今週までに来てもらえると助かるかなぁ。なんて」
「分かりました。明日にでもよります」
「それは助かるよ。アダプトン。頼んだよ、助手候補生っ!」
「何しれっと助手候補にしてるんすか。あの魔法について教えたら、ただの教師と生徒になりますからね」
「分かった。分かった。うんうん。あ、あと、僕がお抱え魔法研究者ってことは内緒ね」
フィルザはウィンクをしながら笑って言った。が、アダプトンはニヤリと話笑った。
「では口止め料を頂こうか」
「え?」
「え?じゃないですよ。ギブアンドテイクでしょ?」
「一応、要求内容を確認しても良いかな?」
「良いでしょう。平民の校舎を新しく綺麗な校舎にしてください」
フィルザはどのような難題が出されるかと身を構えていた。だが、内容が内容だけに、呆れ、脱力する。
「ははっ、いいよ。僕はお抱えの魔法研究者だもん。お願いは大体通ると思うよ」
「それは楽しみです」
そして、二人の交渉には終止符が打たれたのだった。
元傭兵のスローライフ追及 悪ッ鬼ー @09670467
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