第35話 童貞野郎
食器を弁償し終えた勝は、自業自得とはいえ給料の大半を使ってしまいオモコを買う余裕がなくなった事を後悔しながら、アレン達と共に街をぶらついている。
「あ! いいなあのブランド!」
マーラは若者向けのファッション店にある際どい服装を見て、欲しそうな顔をしている。
「ねぇ、アレン! 恩赦出たんでしょ!? 買ってよ!」
「馬鹿言え! さっき弁償したからさ、金はねえよ!」
「おっぱい見せてあげるからさあ!」
マーラは胸の谷間に胸をやり色気を誇張しており、出征前に地元の繁華街の女郎屋の情婦そっくりだな、この国も落ちたものだな、淫らだなと勝は深いため息をつき、股間に血が行きそうになるのを必死になり抑えている。
「馬鹿なこと言ってるんじゃないわよ! ねぇあんたゴルザさんに会いに行くんでしょ!? そんなねぇ、くだらない色気出したってねぇ……!」
ジャギーは、安い酒場にいる、肌を露わにして鼻の下を伸ばす男の財産を奪おうとしている情婦のようなマーラに侮蔑の視線を送る。
「何? あんただってさ、色気ないでしょ? 私知ってるのよ、女郎屋でバイトしようとして落ちたのを。私は楽勝で受かったけどねぇ。そんな胸じゃあ落ちるに決まってるわよ!」
マーラはジャギーの乳首を思い切りつねる。
「痛てててて……! 何すんのよ!」
ジャギーはマーラの胸に火弾を当てる。
「熱いわね、この糞女! 私に喧嘩売ってんの!?」
マーラは焼け焦げているブラを投げ捨てて、回復呪文をかけ、軽い火傷をしているGカップクラスの胸に再度回復薬をかけ、短剣を腰から抜く。
「あんた胸しか取り柄無いんじゃないの? 顔は卑猥だしさ!」
ジャギーは指に炎を灯しており、いつでも臨戦態勢である。
「まぁ落ち着けよ! こんな所で喧嘩したってさ! てか、服着ろよ!」
アレンは慌てて、マーラに来ているシャツを脱いで手渡す。
(なんで凄いものを見てしまったんだ……! もっとやってくれ……!)
勝は股間の高鳴りを抑えきれず、むくむくと大きくなる。
「この変態野郎!」
「童貞!」
マーラとジャギーは、勝の股間に向かい、火弾と氷結を放った。
🐉🐉🐉🐉
(何だよ、たかが、マスをかいただけであんなことしなかったっていいじゃないか……!)
勝は先程の自分の行為がどこの世界であっても変態的な犯罪行為だという自覚がなく、不貞腐れている。
「変態でしょこの男……」
「うんそうねぇ……」
マーラとジャギーは自分の卑猥な行動を悔い改めようとはせず、勃起していた勝を軽蔑の眼差しで見ている。
(クソッタレ、何であんな卑猥な格好をしてるんだ……!? にしても、金がなくなってしまった……はぁーあ……ついてないなぁ)
勝は先程の魔法でボロボロになったズボンを捨てて、残りのお金全てを使って新しいズボンを購入したのである。
「ねぇ、似合うこのブラ!」
マーラは先程ジャギーの火弾で焼け焦げて捨てて新しく買った金色のブラをヤックルやアレン達に自慢げに見せている。
「うん。似合うよ」
ヤックルもまた勝と同じようにウブなのか、顔を赤らめて照れ臭そうにマーラの胸の谷間を凝視している。
「何ガン見してんのよ!? 金もらうわよこの糞メガネ野郎!」
マーラはヤックルの卑猥な視線に気がついたのか、慌てて胸の谷間を隠し、罵倒を始める。
「あ、いや……」
「だってしかたねぇべ、こいつ彼女いない歴イコール年齢でよぉ、風俗でも勃たねぇし! 終わってんな!」
アレンはがはは、とヤックルを弄り倒し、周りがどっと笑いの渦に包まれる。
「……」
ヤックルは余程腹の中が気に入らないのか、煉獄の詠唱を始める。
「んな、悪かったよ! 冗談だよ! お前の煉獄はよ、ゴーレムを溶かすからよ! 俺らがくらったら骨まで溶けちまう!」
アレンは慌ててヤックルに謝り、ヤックルは煉獄の詠唱を止める。
「成金主義ね……」
ジャギーはボソリと呟き、先頭をズカズカと歩き始める。
「さてと、俺らはどこに行くんだっけ?」
アレンはオモコを口に咥えて火をつける。
「ゴルザさんの所だよ! もう回復したし、全快祝いだよ!」
ヤックルは革製の袋に入れた果物を手に取ってみせる。
「そうだったな……てか、回復呪文かけても治らなかったんだっけ?」
「なんかね、突き刺された場所が深傷すぎて、回復呪文が届かなかったんだよ、完全には。それがもう傷が癒えて、エレンさんやトトス司令と一緒に住んでるんだよ」
「エレン? ……あぁ、あのなんか変な実験台になった女だったか。ゴルザさんの元カノだっけ? 禁呪で自爆呪文を覚えたのはいいけれども何故か使えなくなったんだよなー」
「……」
勝はエレナが自爆呪文を放つ直前で脇腹を軽く斬り、魔封剣のお陰なのかよくはわからないのだが、魔法が使えなくなったのである。
(こいつのおかげなのだろうか……?)
勝の腰についている魔封剣は、鞘に入れられて、次の戦いの機会を今か今かと待ち侘びており、その剣の気配が勝は感じており、妖刀だなと恐怖に襲われる。
中国戦線の際、勝は知り合いのつてで捕虜の首切りに使われたと言う刀を見せて貰ったのだが、鞘を握った瞬間に強烈な殺意に襲われて、慌てて手から離したのである。
「早く行こうよ、待ち侘びてるよ」
ヤックルは久しぶりに師匠に会えるのか、足取りは軽く、街から少し離れた丘の上にある小屋へと足を進める。
「あいつ、なんか最近やる気出してねーか?」
アレンはヤックルの自信に満ち溢れた表情を見て、以前の暗キャぶりとは思えない、不思議な感覚に陥っている。
「まぁ、でも冴えなくて殻に閉じこもってるよりかは良いんじゃないの? ……それに、私さ、あいつのあんなところが」
マーラは何かを言おうとしたのだが、慌てて口を塞いだ。
「? なんだよ?」
「いや何でもないわ、行きましょう!」
「痛えよ!」
マーラはアレンのお尻を叩き、ヤックルの元へと走り出す。
勝は極限にまで高めた視力と聴力により、マーラが話そうとした言葉が朧げに聞こえ、ニヤリと笑い、ゴルザの養生している小屋へと足を進める。
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