第17話 封印の洞窟その①

 この世界には、未だ嘗て誰も足を踏み入れたことがないと言われている未開の洞窟がある。


『封印の洞窟』――


 厳密に言えば、紀元前に何者かによって作られたというのが研究者の見識なのだが、何度か探索をしようにも、頑丈な作りで内部に入ろうとしても入る事が出来ず、数百年もの間放置されており、誰もこの先に入ったことがないのである。


 彼等は先ず作戦として、勝とアレン達を先発隊として送り、後発としてアランやトトス達が向かう事になった。


 勝達はドラゴンを駆り、ムバル国の隅にある封印の洞窟の方へと向かう。


(ドラゴンが降りれる場所はあるのだろうか? もし仮にここがまだ森としたら、飛び降りるのか? パラシュートがないのが致命的だが、何とかやってみせる……!)


「うわっ、凄いなこれは!」


 勝の後ろにいるヤックルは、この世界の住民の例に漏れずにドラゴンに乗った経験はあるのだが、心が豊かなせいか、空を飛んでいる感覚に心を躍らせている。


(確かヤックルさんは、視力が極端に悪くて、竜騎士試験に落ちたんだったな。だが、仮に合格していたとしても、かなり心身を消耗する竜騎士にはなれずに脱落していただろうな……)


 旧日本軍の予科練の試験でも視力が悪くて脱落した者は少なからずいた、彼等は飛行機に乗り空を飛ぶという昔の夢を叶えられずに悔しい顔をして勝達の前から去っていったのを勝は覚えている。


「ヤックル! これは遊びでは無いんだぞ! 貴様の使う煉獄が頼みの綱だからな! 魔物がうじゃうじゃいるかもしれぬ!」


 先頭をホワイトドラゴンに乗り悠々と飛ぶアランは童心に返っているヤックルを諌めて、何を思ったのか、急に旋回をし始める。


「アラン隊長殿! どうなさったのですか!?」


 勝は何事かと、アランに尋ねる。


 他の竜騎士たちもアランの行動に疑問を感じたのかスピードを落とし、ホバリングをして空中で待機をしている。


「ん!? あれは……? 滑走路か!?」


 アランの眼下に広がる、明らかに人工物と思われる、コンクリートのような物で覆われた白の滑走路らしき草木一つない空間に、裸眼視力2.5以上の勝は直ぐに気がつく。


「ここに降りていいのか?」


「罠かもしれぬ、爆弾が地面に埋まっているのかもしれぬ……」


 他の竜騎士達は、この世界では異質の空間を見たのは当然の事ながら初めてであり、どうするか迷っている。


「俺が降りる」


 アランは意を決したのか、周りに自分が先導を切って降りることを伝える。


「いえ、私が行きます……」


 勝はアランにそう伝え、ゼロを滑走路の方へと向かわせる。


「勝、やはり別の者に行かせる。魔封剣はお前にだけしか使えない。お前が死んだら困るからな。代わりにアレンを行かせる事にする……アレン、ここに降りろ」


「は、はい……」


 勝の横でオスカーにマーラと共に乗っているアランは、マーラのFカップ級の胸が背中に当たり、興奮しているのだが、何があるか分からない滑走路へ降りることを一瞬躊躇いながらも降りる事にする。


「俺ってつくづく、付いてない役回りだなぁ……」


 アランのぼやきが勝の耳に入り、勝は吹き出しそうになってしまう。


 🐉🐉🐉🐉


 滑走路はまるでアスファルトのような硬い物質でできており、まるで昔飛行機が離着陸に使っていたかのような錯覚を勝は覚える。


 そこから一直線、三角形の山の入口へと続く道がある。


「ふぅーむ、こんな道昔はなかったぞ……」


 アランは不思議そうな顔を浮かべて、地面を見やる。


「アラン隊長、あの山が封印の洞窟なのでしょうか?」


 勝は、アランに尋ねると、アランは不思議な表情を浮かべて口を開く。


「あぁ、そこに、正方形の扉が見えるだろう? 前は閉まっていたのだがな、急に開くようになってしまった。……うーむ、まるで誰かが来るのを待っているかのように、この道が出来た、のか……?」


「アラン、ともかく今は先に進もう、疑問に思うのは後だ。この大戦に勝てる何かがあるのかもしれぬ……!」


 トトスは冷静にアランにそう言い、封印の洞窟へと足を進めていく。


「よし、行きましょう。何かあるかもしれませんから……」


 勝は勇み足だが、アレン達は何がやばいことでもあるのでは無いかと、不安げにトボトボと足を進める。

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