1話 ここからまた始めよう
001
「併合記念日か……賑やかだな」
露店の果物屋の前でローブを着た男は言った
ハフナーの街は朝から活気に満ちている
どこからともなく聞こえる音楽は陽気で
笑顔と笑い声が溢れていた
子供たちは二つの手旗を持って走り回っている
一つはこの国、プトクスの国旗
もう一つはイューロット帝国の国旗だ
「あぁ、今年は特別でな」
果物屋の店主は言った
「併合して10年の節目だからよ、明日の式典にはショウ様がおいでなさるのさ英雄のご帰還に街中大盛り上がりってわけよ」
店主も笑顔だ
「英雄……」
男がポツリと言った
フードを深く被っているため顔がよく見えない
「そうさ」
店主は語り出した
「10年前、この国に革命を語るテロリスト達が居てな、プトクス政府軍と激しい戦闘になったんだ。ここら辺りも被害に遭ったんだけどよ、南の方のなんとかって村なんて村ごと燃えて消えちまった。 跡形もなくだ」
男は黙って聞いている
「そりゃあ、ひどい戦いだった。プトクス人が大勢死んだ。ひどい時代だった。あんなことは、本当にもう二度とごめんだ……」
店主の笑顔は消えていた
「それを収めてくれたのがショウ様、ショウ・イューロット殿下さ! テロリスト供を一掃し、プトクスをイューロットに併合してくれた! 今こうして平和なのはショウ様とイューロット騎士団のお陰なんだ!」
店主の声は熱を帯び、だんだん大きくなっていく
「みんな感謝してる、ハフナーの街の人もプトクスの国民も。ショウ様万歳!
併合記念日万歳! イューロット万歳!」
併合記念日万歳! イューロット万歳!
街の人も呼応するように万歳を始めた
「そうか」
そう呟くと男は陳列されているリンゴを一つ手に取った
前から見たリンゴは色も形も綺麗だったが、後ろが腐っていた
「それがこの国の
男は元あったようにリンゴを戻した
イューロットとプトクスの国旗が街を飾っている
街は平和にみえた
YEWLOTT STORY イューロットストーリー ヨシヨリ @yoshiyori
★で称える
この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。
フォローしてこの作品の続きを読もう
ユーザー登録すれば作品や作者をフォローして、更新や新作情報を受け取れます。YEWLOTT STORY イューロットストーリーの最新話を見逃さないよう今すぐカクヨムにユーザー登録しましょう。
新規ユーザー登録(無料)簡単に登録できます
この小説のタグ
関連小説
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます