05 o-ex(お蔵入り脚本)

 ぴちゃぴちゃ。


 キスの音。


 舌のあいだで、液体が、擦れる。


 わたしが四肢を動かせば、戦いが起こる。


 キスの雨のなかに、わたしはいる。


 わたしが声をかければ、彼はわたしの身体を抱く。愛の言葉をささやく。ふたりのあいだに流れる時間が止まる。


 録音の音はノイズのように、わたしの回りでうごめく。


 私の声。目の前を通ったと思えば、すぐに後ろからすり抜けていく。多くの人間が周りにいるけど、わたしの回りにはひとりしかいない。


 手が。


 脚が。


 使えなくても。


 愛ひとつで、すべては変わる。


 わたしの心に雨を降らせる。わたしの身体に華を咲かせる。


 生きる。ただひたすらに、今日、この日のために、生きる。愛を受け入れて、濡れながら身体を合わせる。わたしの回りにはあなたがいる。もう、ひとりきりじゃない。みんながいる。


『はい。おっけいです。凄いのが撮れましたよお』


「ふざけるなっ。こんなっ。こんなの使わせてたまるかっ」


 あら。


 まだ足りないかしら。


「んむ」


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レイン・レイド 春嵐 @aiot3110

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