第2話 新天地へ

『……此処は私の空間だ…』


「私の空間…?貴方の部屋ということですか?それにしても…私はかなりの重症であったと思ったのですが…。今は痛みどころか、動きにくさすらも感じない。なんと感謝したらいいものか。」


『気づいていないのか…まぁ仕方あるまい。よく見てみろ、この空間はお前から見ればおかしい物のはずだ。お前は私を視認できている。しかし私の影は見えているか?お前自身のもそうだ。』


 ふむ…まだ自分が救い続けられると思い、柄にもなく浮足立っていた。言われてみればそうだ、影は存在しない上あの男の声は頭の中から響いているような感覚がするのだ。考えられるのは夢だが…、その場合死にかけの私がこんな鮮明な夢をみていることとなる。


 まさかとは思うがあの男、いやあの方は人ではなくより高尚な存在なのでは…。そして私の願いを聞いていただけるのでは…。

「申し訳ありません。少々気が動転していました。貴方様は死したわたくしめを拾い上げて頂いたのですね!嗚呼なんと…。」


『…既に死んでいると認識できたなら話が早い。しかし、私は君の事を蘇生することなぞできん。そんな事は君の世界の摂理に反している。そこで私は君のしてきた事を活かしてくれないかと思っている。』


「わたくしめ程度がお役に立てるのならば何なりと。」


『良い心がけだ。何そう難しい事ではない。今までしてきた事をもう一度やって欲しいのだ。ただし異なる世界という条件が付くがな…』


「是非にやらせていただきたく存じます!!」


『結構なことだ、軽く説明してやろう。これからの世界のことを…

〈遥か昔のことだ…その世界には私のような存在が複数いた。それ以外はチキュウとほぼ何も変わりなく、強いて言えばヒトガタの種族が複数いたという所が違いか。しかしだ!忌々しくも精霊などというものが宙から此の星に入ってきた!奴らは此の無垢なる生命たちに加護などと戯言を吐き己の一部を吸収させ、世界の形を変えおった。それによって生き物達の体は徐々に変わっていった。まず、星の力を使うことのできるように新たな器官が生まれた。その器官から生成されるのが俗に言う魔力だ。この器官の強度、性能には個体差がありそこで個人間に大きな格差が生まれた。そして、生物の能力、実力の指針となるようにステータス、スキルといったようなものが生まれた。この仕組みでは生物に位階、種族が設けられ、肉体が魂ごと変質されるようになった。重要なのがこれらがすべての生物に適応されたところだ。生き物は争い合い、闘いに明け暮れた。己自身をより強くする為に。だが、結果として何も残らなかった…文明は衰退し、生き残った強者は精霊に連れて行かれ、私達は封じ込められた。そして彼らは飽きた精霊達が次に向かう世界での遊び道具となった…。〉

 私はこの悪しき仕組みを壊さなければならない。しかし、如何せん影響を受けた物が多すぎる。そこでお前の力を私に預けてくれ。』


「何ということか……。」


 わたしは愚かな人々のことを哀れに思いつつどのようにすれば良いか考えていた。しかし、私のすべきことは唯一である。


「わたくしめにお任せください。救済してみせましょう。」


『そうか。では、頼む。ωαημοβημομςλΑλεπμρλρ』


私の身体がまばゆく光る


『祝福を授けよう。それが餞別だ。』


彼の方に感謝しつつも私の意識は薄れて……



  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

貴方に救済を与えましょう ファルフ @falf

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

フォローしてこの作品の続きを読もう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ