貴方に救済を与えましょう

ファルフ

第1話 死

 (死ぬ時はこうも呆気ないものなのか…)

私は83人目に助けた男性の友人と思われる人に後から殴られて地面に伏している。

その人はもう去りこの路地裏には私と妙に大きい黒猫しかいない。

 この瞬間まで私は失念していた。誰もが私のような視点を持っているわけではないことに。今まで助けた人の顔を思い出す。安らかな顔の人もいたが、泣き喚く人もいた。すべてを受け入れ思い出に浸る人も入れば、もがいている人もいた。

 私は苦しんで欲しいのではない に直面し今まで己のしてきた事と向き合って浄化されて欲しかったのだ。

 人は心の弱い生き物だ。一人で自身に向き合う事なぞかんたんに出来る訳がない。私はもっと彼らに向き合うべきだったのだ。彼らの情報を知るだけでなく彼らの気持ちを知り、彼らのすべてを受け入れあげるべきだったのだ。そうしたらもっと多くの人々を救えただろうに…。

 しかし、私には学というものが足りなかった、学力的なものでなく人の感情、好みというような個人の本質に関するものが。そうすれば、より多くの人を救えただろうに。

 私に救われる権利などない。両親の想い、安らかに健康的に、そして幸せに暮らしてほしいと言うその想いを踏みにじった。そして一度始めた事を途中で放棄するなど…

 私は自分のことを理解しているつもりだ。

私は世間一般として見たら異端で、ただの大量殺人事件の犯人に過ぎないのだろう。しかし私には私なりの確固たる信念、正義がある訳であり、そこから目を背ける事など私には到底出来ない。

 しかし私の身体はどうにも動こうとしない。やり遂げることができなかった事に後悔と自責の念がこみ上げて来る。

 もし我々の到底及ばない所に神々がいらっしゃるのなら…

 どうか私にこの続きをさせてはくれないだろうか。この世界で無くたっていい、今度こそは、今度こそは…


『……ナァーオ(猫の鳴き声)』

誰もいない路地裏に猫の鳴き声が響く。

 すると次の瞬間男がいた痕跡すらそこにはなくなっていた。


男は妙な感じがしていた猫の鳴き声が聞こえてからまるで場所が変わったかのような雰囲気を感じていた。何故か軽くなった体で目を開いてみるとそこには、ガタイの良い男性が立っていた。不思議に思い周りを見てみると何も無い無限に広がる空間。気になって男性に訪ねてみる。

「此処は?」






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