王太子が見た同盟国の婚約破棄

マキシム

王太子が見た同盟国の婚約破棄

私の名はカイル・セルベックス、セルベックス帝国の王太子である。私は現在、側近のシオンとともに同盟国であるシュヴァリエ王国創立300年記念パーティーに出席し国王・王妃両陛下、王太子のレイズ・シュヴァリエ殿下と婚約者のマリア・アンジェルト公爵令嬢と王族や貴族の方々に挨拶をし記念パーティーも和やかに進んだ矢先のことだった


【レイズ・シュヴァリエ】

「マリア・アンジェルト!貴様はメイリン・ハート男爵令嬢に対し数々の嫌がらせを行ったことは明白である。シュヴァリエ王国王太子であるレイズ・シュヴァリエの名において貴様との婚約の破棄を宣言する!」


広いホールに響くレイズ王太子の宣言に一時騒然となった

私ことカイルは一時ぽかんとしたがすぐに冷静になり側近のシオンに事の詳細を聞いた


【カイル・セルベックス】

「シオン、レイズ王太子は何をいっているのだ」


【シオン】

「さぁ、私にもさっぱり・・・」


状況を判断する矢先にレイズ王太子と婚約者のマリア・アンジェルトのやり取りが始まる


【マリア・アンジェルト】

「殿下、一体何をおっしゃっているのでしょうか?私が嫌がらせをしたとはどういうことですか?」


【レイズ・シュヴァリエ】

「とぼけるな!貴様がメイリンに対して数々の嫌がらせをしたとメイリンが私に泣きついてきたのだ」


レイズ王太子の傍らには小動物系の令嬢という言葉が似合うメイリン・ハート男爵令嬢が控えており怯えた表情でマリアを見つめていた


【マリア・アンジェルト】

「私はその御方のことは存じませんし、何かの間違いですわ」


【レイズ・シュヴァリエ】

「黙れ、貴様がメイリンに嫌がらせをするのを見た者がいるのだを大人しく観念しろ」


【メイリン・ハート】

「マリア様、いい加減罪を認めてください、ちゃんと目撃者もいるのです」


すると野次馬から目撃者が名乗り出た


【モブ目撃者A】

「マリア様がメイリン男爵令嬢の教科書を破いているのを見ました」


【モブ目撃者B】

「マリア様がメイリン様に暴言を吐きつづけました」


【モブ目撃者C】

「マリア様がメイリン男爵令嬢を階段から突き落としたのを目撃しました」


【モブ目撃者D】

「メイリン嬢に対して呪いの藁人形を打ち続けているのを見ました」


次々と目撃者が名乗り出てマリア公爵令嬢を糾弾し追い詰めようとしたところへ私は待ったをかけた


【カイル・セルベックス】

「レイズ王太子、ちょっとよろしいか」


【レイズ・シュヴァリエ】

「何か御用か?カイル王太子、失礼ながら部外者はご遠慮願いたい」


【カイル・セルベックス】

「失礼なのはレイズ王太子、貴殿ですよ。今はシュヴァリエ王国創立300年の記念パーティーですよ。この大事な国事を貴殿の私事で潰すおつもりですか?」


【レイズ・シュヴァリエ】

「そ・・・それは」


レイズ王太子が我に帰り周りを見渡すと場の空気の重さに事に気付いたレイズ王太子が言葉を失ってしまった。その姿に業を煮やしたメイリン男爵令嬢が・・・


【メイリン・ハート】

「恐れながらカイル王太子殿下、私はマリア様に嫌がらせを受けたのです。これは私たちとマリア様の問題です、邪魔をしないでください」


メイリンの無礼な発言にシオンが怒鳴った


【シオン】

「無礼者!この御方はセルベックス帝国の王太子であるカイル・セルベックス王太子殿下であるぞ!セルベックス王太子殿下に向かって邪魔とは何だ、不敬に値するぞ!」


シオンの怒声にメイリン男爵令嬢は直ぐ様レイズ王太子の後ろに隠れ、いつもの怯えた姿に戻った

するとマリア公爵令嬢が私の元へ訪れた


【マリア・アンジェルト】

「カイル王太子殿下、このような醜態を晒してしまい誠に申し訳ございません」


マリア公爵令嬢が涙ながらに私に謝罪をした


【カイル・セルベックス】

「マリア公爵令嬢が謝ることではない、悪いのは場の空気を壊したレイズ王太子とメイリン男爵令嬢だ、それにそなたが嫌がらせをするような人ではないと私は信じている」


そう言うとばつが悪そうに黙りこむレイズ王太子とそのレイズ王太子にすがり付くメイリン男爵令嬢の姿があった


【マリア・アンジェルト】

「ありがとうございます」


涙ながらに感謝するマリア公爵令嬢と呆然と立ち尽くすレイズ王太子とその背中に隠れるメイリン男爵令嬢と二の足を踏む目撃者たち・・・


【シュヴァリエ国王陛下】

「もう良い」


事の成り行きを黙って聞いていたシュヴァリエ国王陛下はカイル王太子に向かい謝罪した


【シュヴァリエ国王陛下】

「カイル王太子、我が愚息が申し訳ないことをした」


その場にいたカイル王太子を除いた参加者全員が騒然となりレイズ王太子も父が謝罪をしたことによって自分の軽率さを恥じた


【カイル・セルベックス】

「いいえ私も大事な記念パーティーの邪魔をしてしまい申し訳ありません。ですが一言申し上げます、もしレイズ王太子を次期国王に指名するならば我等セルベックス帝国との関係も考え直さなければなりません。どのような理由であれ王命に逆らった者を国王の座に据えれば同盟国にも下の者にも示しがつきません」


【シュヴァリエ国王陛下】

「全くその通りだ、まさか愚息がこのようなことを仕出かすとは思わなかった」


シュヴァリエ国王陛下が苦虫を噛みしめたような表情を浮かべ・・・


【シュヴァリエ王妃陛下】

「あぁ、どこで教育を間違えてしまったのか・・・」


シュヴァリエ王妃陛下も息子の愚行に頭を痛めた・・・


【カイル・セルベックス】

「ですがこれは貴国の問題ですので他国の私がどうこう言うつもりはございません、我がセルベックス帝国も末永く同盟を結ぶことを切に望んでいます」


【シュヴァリエ国王陛下】

「そう言っていただけるとは誠にかたじけない、衛兵よ、レイズとその一派を即刻捕らえよ」


国王の号令で衛兵が現れ、レイズ王太子とメイリン男爵令嬢と目撃者たちは抵抗するも捕らえられ、そのままホールから消えた


【シュヴァリエ国王陛下】

「カイル王太子、皆の者には大変迷惑をかけた。さぁ、パーティーを再開しよう」


そこから音楽隊が楽器を奏でパーティーは再び和やかなムードに包まれた


【カイル王太子】

「マリア公爵令嬢、ダンスの御相手をしてくれませんか?」


【マリア公爵令嬢】

「慎んでお受け致します」


私はマリア公爵令嬢とダンスをパーティーが終わるまでに楽しみながら故郷のセルベックス帝国へと帰国した

その後の婚約破棄騒動の顛末で分かったことだがどうやら冤罪だと言うことが判明し元目撃者たちは全員、メイリンに金と王太子への側近の口利きで雇われて目撃者になったことを厳しい拷問と尋問によってあっさりと白状し元目撃者たちは全員死罪にはなった

レイズ王太子は次期国王に相応しくないと見なされ王位継承権を剥奪され王太子は第二王子が受け継ぎ、レイズはメイリン・ハートの実家の男爵家に婿入りし生涯離婚も許されず辺境の領地へと左遷されられた

そしてメイリン男爵令嬢はこの決定に「話が違う・・・王太子妃になれると思ったのに」とか「カイル王太子、もしくは第二王子と結婚する」とか不敬極まりない発言をほざいたらしく反省の色なしと見なされシュヴァリエ王国で一番厳しいといわれる修道院(社会的に問題のある人物を生きたまま口では言い表せないような生き地獄)に入れられ生涯幽閉生活を送るそうである

事件の被害者であるマリア公爵令嬢は国王・王妃両陛下から謝罪を受け現在は・・・・


【カイル・セルベックス】

「マリア、遠路はるばるよく来てくれた」


【マリア・アンジェルト】

「カイル王太子殿下、お招き頂きありがとうございます」


マリア公爵令嬢は傷心旅行も兼ねてカイル王太子からの招きでセルベックス帝国に来ていた、そして・・・


【カイル・セルベックス】

「マリア公爵令嬢、返事を聞かせてもらえないだろうか」


【マリア・アンジェルト】

「カイル王太子殿下は誠によろしいのですか?私のような者を妃に迎える等」


【カイル・セルベックス】

「よい、言ったであろう、そなたは嫌がらせをする人とは思えないと。それに私はそなたがレイズの婚約者になる前、そなたに初めて会ったときからそなたに一目惚れをしていた。しかし残念なことにレイズの婚約者になってしまいあの男を恨んだこともあったが、大事な同盟国を前にそなたへの思いを封印してきた」


【マリア・アンジェルト】

「カイル王太子殿下・・・」


【カイル・セルベックス】

「今となってはそのレイズに感謝している、私は是非そなたに妻として来てほしいのだ!王太子としてではなくカイル・セルベックスとして見てほしい!」


私はマリア公爵令嬢に熱心な告白をした、もう封印してきた思いが解き放たれた瞬間だった


【マリア・アンジェルト】

「カイル王太子殿下、慎んでお受けいたします」


【カイル・セルベックス】

「そうか、受けてくれるか!」


【マリア・アンジェルト】

「末永くよろしくお願いいたします」


【カイル・セルベックス】

「こちらこそよろしく頼む、シオン、早速湯浴みの準備をしろ!マリアと一緒に入る!」


【シオン】

「殿下、一旦落ち着け!衛兵、殿下をお止めしろ!」


その後、マリア公爵令嬢はシュヴァリエ国王の養女となり私の妻となりマリアとの間に3男3女を儲け末柄く両国の繁栄を誓い合った



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王太子が見た同盟国の婚約破棄 マキシム @maxim2020

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