&α 命を祝福する折り紙
「おはよう」
「おはよう」
「昨晩はおたのしみでしたね?」
「おたのしみすぎるでしょう。下まで聞こえていたって言っていましたよ」
「いいんだよ。息子夫婦のほうが営みはうるさいんだから」
「ふがふが」
「ふご」
「おじいちゃん、おばあちゃん。おはようございます」
「ふごふご」
「あら。入れ歯。寝るときにいっしょに持っていったんじゃないかしら?」
「あらほんとでした。ごめんなさいね。こわがらせないように寝室に入れ歯置いたんだった」
「おはよう」
「おはようございます」
「あらあ。昨晩はおたのしみでしたね?」
「三人兄弟になる前に、おじいちゃんとおばあちゃんにしてやるよ」
「そしたらばあさん。わしらはひいじいちゃんとひいばあちゃんだな」
「ひええ」
「それよりも。あいつはどこに」
「あら。寝てる」
「あれだけお昼寝してたのに、まだ寝れるのか。子供の眠る力はすごいねえ」
「結局おれたちが寝たあとも起きてたよ」
「折り紙もこんなにたくさん折って」
「ふああ」
「おっと。起こしちゃったかな。おはよう」
「うわあああ」
「おうっ」
「おとうさん。おかあさん。こわかったよお」
「どうしたの?」
「揺れて、叫び声がしたの」
「ほらね。父さんと母さんはうるさいんだよ営みが」
「そしたらおにいちゃんとおよめさんがいなくなって、そして、今度はもっと大きく揺れて叫び声がしたの」
「あら」
「息子夫婦のが営みはうるさい」
「こわかったよおおお」
「ごめんね。ほんとにごめん。もうすこし我慢してね。そうしたら、妹か弟ができるかもしれないから」
「ほんとに?」
「甥か姪かもしれないけどな」
「おい、めい?」
「まあとにかく、がまんしてくれ」
「うん。こどものめんどうをみるの。わたしが。そのために、もっともっと、折り紙を折る」
「ありがとう」
「おれたちもたくさん、祈って折るか。新しい命ができますようにって」
「うん。折ろうか」
「娘も孫も元気でよろしい」
「ひ孫が先か、三人目の孫が先か。たのしみですねえ」
去り行く者に捧げる折り紙 春嵐 @aiot3110
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