第3話
からからと小石を踏み潰す音が背後の崖に響いていたが気付けばそれも遠く霞んでいき、ちらほらと背の高い緑のものが見えるようになってきた。竹の林に入ったらしい。
葉の鋭い縁が、むき出しになっている足の裏の裏を薄く裂く。そのぴりぴりとした感覚がどうにも楽しくて鬼はくすくすと笑いながら葉を引っ掛け、蹴り上げては宙に舞わせていた。かさかさ、さらさら、厚く積もった、乾いた葉が優しい空気を生み出していたが、鬼はゆるりと動きを止め、首を傾げた。
不思議だ、変だ。さっきから静かすぎる。あたしの声が、踏む音が、最初は確かに落ちて鳴るのだがそのうちふうわりと消えていく。足の下にあるこいつらに吸われたのかしらん。なんだか雪の無い冬のようだ。
そう思って鬼はその場にしゃがみひとつを指でつまんだ。匂いを嗅ぎ、ほんの少し口に含み、すぐに吐き出してはまたじろじろ眺める。
ゆるしの木 余香 @hanasann
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